真の歴史へ・その二

「その辺りはこっちでなんとかするさ」

始めてみるメドーサの表情に、横島は僅かだが希望を見出だしていた

未来では殺気を向けるばかりだったメドーサでも、状況が変われば話す事も可能だと改めて実感する


「あんた、一体…」

驚きや戸惑いや疑念など複雑な感情があふれ冷静さを失っているメドーサは、この状況をどう判断していいかわからない


「横島さん、メドーサの場合は罪を揉み消すのは流石に無理かと… 有名過ぎるので…」

「じゃあ、死んだ事にするか? 一回、記録から消しちまえば後はごまかせるだろ?」

「それならば可能だと思います」

一方横島と小竜姫は、メドーサの目の前で今後の方針を簡単に決めてしまう

まるで簡単な問題のように二人は言うが、もちろんメドーサは信じられない


「まっ… まちな! アタシはあんた達と手を組むとは言ってないよ!」

慌てて横島を睨むメドーサだが殺気はまるで無く、どこか以前とは違った感じである


「わかってるって。 とりあえずお前が死んだ事にして神魔界の指名手配から抜かすから、後はゆっくり考えてくれ。 さすがに詳しい話は今は言えん」

軽い口調の横島は、メドーサに考える時間を与えるためにこの場での答えを求めなかった


「一応言っておきますがあなたが死んだ事になっても、魔界に戻って誰かに見つかれば無駄になります。 出来ればほとぼりが冷めるまでは人界に居てください。 後、人間の法律を守れとは言いませんが、目立つ行動も避けてください」

混乱が収まらないメドーサに小竜姫は注意すべき事を告げるが、メドーサは信じられないように見つめるのみである


「最後に、この話に乗るか断るかはお前の自由だ。 もし次に敵として会うなら手加減は出来んしな。 仮にお前が今日の話を誰かに話しても証拠は無いし無駄だよ」

横島は最後までメドーサの自由にさせていた

信じるか信じないかまで自由だと言う横島に、メドーサは始めて恐怖を抱く


(こいつ一体……)

アシュタロスとは全く違うが、同じく底が知れない横島をメドーサはどう判断していいかわからない


「帰るなら玄関からお願いします。 それと、もっと横島さんが知りたければいつでもいらして下さい。 敵でないなら歓迎しますよ」

立ち上がり帰ろうとするメドーサを小竜姫は玄関まで案内していく


「一つ聞きたい。 あいつは人間か?」

頭が混乱したメドーサは、見送りに出た小竜姫にふと尋ねてしまう

何かを考えていた訳では無く、あまりに理解出来ない横島に思わずそう言葉が出たようだった


「横島さんは人間ですよ。 その存在には秘密もありますが… あんな人が神魔界に居れば世界は全く違う世界になっていたでしょうね」

メドーサの問い掛けに、小竜姫は思わず笑ってしまう

メドーサの混乱や疑問も小竜姫には理解できるのだ


「それもそうだね…」

少し呆れたような笑みを浮かべたメドーサは、そのまま事務所から去って行った


「ここがあなたのターニングポイントですよメドーサ。 どの未来を選ぶかはあなた次第です」

遠くなっていくメドーサを優しく見つめる小竜姫は静かにつぶやいて事務所に戻っていく


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