真の歴史へ・その二

「突然の事で驚いただろうけど、俺はお前とゆっくり話がしたかったんだ」

無言で睨むメドーサに横島は、自分の気持ちをそのまま伝えていた


「アタシを馬鹿にしてるのかい?」

神族の小竜姫とその手下だろう人間が自分と話したいとは、何のつもりかメドーサには全くわからない


「お前を馬鹿にして遊ぶほど俺は酔狂じゃないよ。 ただ、お前が何を考えてるか知りたかっただけだ」

殺気を向けるメドーサに、苦笑いを浮かべる横島は普通の口調で話していく

まるで仲間や友達に話すような感じの横島に、メドーサは別の意味で気味の悪さを感じる


(何のつもりだ…)

自分の背後関係を知りたいのかとも思うが、それならば神界に連れて行き記憶でも覗けば早い

わざわざこんな状況を作った意味をメドーサは理解出来ない


「そう警戒するなって、何も言いたくないならそれでいい。 俺は訳も知らずに殺しあいをするのが嫌だっただけだ」

メドーサと話すなど不可能な事は横島も十分理解している

ルシオラ達姉妹とは背負うモノが違い過ぎるのだから


「あんたは何の為に神界の犬になってるんだ?」

ピリピリした沈黙がどれくらい続いただろうか…

長い時を生きてきたメドーサでも理解出来ない人間に、少し興味が出てきたようである


「神界の犬か… 別に神界に従ってるつもりは無いよ。 ただ利用出来る物は利用するだけさ。 たとえ神界の権力でも……」

「クククッ…、こいつは面白いね。 いいのかい小竜姫? これが神界に知れたらあんたまで謀反人にされちまうよ」

横島のあまりに馬鹿な発言にメドーサは思わず笑ってしまう

冗談でも言っていい言葉ではない

それこそ神族過激派に知れたら、小竜姫でさえ抹殺対象になるかもしれないほどに


「横島さんがそう判断したのなら構いませんよ。 私はもう神族の地位など興味ありませんから」

弱みをみつけたと思ったメドーサはニヤニヤと小竜姫を見つめるが、小竜姫はアッサリとした表情である


「冗談じゃ済まされないよ!」

「私にとって何より大切なのは今居る仲間達です。 仮に神界が横島さんを殺そうとするなら私は戦います」

あまりに神族らしくない小竜姫の発言に、メドーサは思わず熱くなっていた

そんなメドーサを真っすぐ見つめる小竜姫は、はっきりと横島を守ると言い切っている


その表情は揺るぎない信頼と愛情で満たされており、嘘や方便でないのは明らかだった


「あんた達……」

この時メドーサは始めて、横島と小竜姫が本当に恋人なのだと理解する

以前小竜姫がGS試験の時に言っていた事だが、メドーサはあまり信じて居なかった

人間と神族の恋は、人間と魔族の恋よりも遥かに障害が多い

小竜姫が全てを賭けても横島を愛するとは、思いもしなかったのだ


「メドーサ、俺達と手を組まないか? もう神魔界の都合に左右されるのは嫌だろう」

メドーサの表情から殺気が消え驚きに満ちていた時、横島は突然その話を言い出す


「なっ… 何を馬鹿な… アタシは神魔両界のお尋ね者だよ!」

その話を聞いた時のメドーサの表情は、横島も小竜姫も始めてみる表情だった

警戒も何も無く、ただ信じられないように驚きオロオロするその姿は以前のメドーサからは想像も出来ない表情である

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