真の歴史へ・その二

事務所に帰った横島達だったが、休む間も無く僅か3時間後には今回の事件の事後検証に入っていた


「黒岩及び他2名は空間転移の類の術を使用したようで、追跡は不可能でした。 一応香港にあった複数のアジトも調べたのですが、全てもぬけの殻です」

今回裏方に回っていたジークが逃げた黒岩達の行方を追っていたが、やはり黒岩達の行方は不明である


「恐らく事前に撤退の作戦でもあったのだろう。 奴らの撤退は計画的だ」

ヒャクメが記録した黒岩達の戦闘の様子を見ていたワルキューレは、全て計画通りだった可能性が高いと指摘した


「思ってた以上に危険な連中だったわ。 小竜姫さん以外はナメめてた割には慎重だったし、計画的だった」

「ええ、それにあの石像の数は何? 明らかに量産されてるわ」

タマモとルシオラは、予想以上の敵の戦力と計画性に危機感を抱いている

自分達が不利だと解ると、早々に撤退した最後は本当に見事だったとタマモは思う

それにルシオラが気掛かりなのは、予想以上に実用的な石像の量産化だった

あれは並のGSでは全く歯が立たないのは、美智恵達の敗北で明らかなのだ


「それも問題だが、本当にメドーサを生かしたまま連れて来たんだな…」

ワルキューレは飽きれたような視線を横島に向ける

事前に作戦を聞かされていたとはいえ、あのメドーサを生かしたまま連れて来るとは正気とは思えない


「俺は未来でメドーサと何度も戦った。 2回殺したし、何度も殺されそうになった。 でもさ、メドーサが憎かった訳じゃない。 それにメドーサが神魔界を憎む気持ちはなんとなくわかる。 正直言うと、一回ゆっくり話したかっただけなんだ」

微妙な表情で見つめるワルキューレとジークとヒャクメに、横島は少し遠い眼差しで語り出す

未来において神魔の真実も何も知らない横島は、ただ周りに流されるままにメドーサと戦ってしまった

しかし世界の破滅と神魔族の真実を知ってしまった今の横島が、今またメドーサを殺そうとは思えなかったのだ


「しかし、捕らえる訳でも無くベッドに寝せておくとはいい度胸をしてる」

現在メドーサは事務所の客室に寝せており、小竜姫が見ている

ワルキューレとしてはいかに小竜姫が見ているとはいえ、自分の事務所にメドーサを捕らえもせずに置く横島の気がしれない


「確かに少々危険だと思いますが…」

ワルキューレに続きジークも心配そうに横島を見る

魔族の二人は、メドーサの危険性を良く理解しているようだった


「それは仕方ないよ。 捕らえて縛り付けておいて、冷静に話しをしようなんて無理だろ?」

横島はあくまでメドーサと話しをしたいようで、警戒心は二の次のようである

そんな横島の姿にワルキューレとジークとヒャクメはため息をはく


「多分、大丈夫よ。 横島はいつもの事だから…」

心配そうな三人に対してルシオラは、何故か楽観的な表情を浮かべている

ルシオラの時もタマモの時も、横島はいつも同じ感じだった

敵だとか危険だとか考えない行動は横島を良く知らないと不安になるだろうが、長い付き合いのルシオラとタマモは楽観的にとらえている

横島のこんな行動の時は何故か上手くいくのだから…


「今は老師も事務所に居るしな。 間違っても戦う事は無いよ。 いきなり逃げ出したら仕方ないけど…」

横島も事務所の安全は一応考えていた

事務所に居るおキヌや小鳩や雪之丞の側には老師がおり、万が一も危険は無いだろうと言う確信があるようだ


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