真の歴史へ・その二

一方超加速状態の小竜姫とメドーサは、先程までとは段違いに激しい戦いをしていた

力と力がぶつかり合い、その余波だけで洞窟の壁や天井の一部が崩れていく


「これで終いだ!」

普通に戦っても勝てないのを悟ったメドーサは、多数のビッグイーターを小竜姫に差し向ける


迫り来る多数のビッグイーターを前に、小竜姫は静かに息を吸い込む


ゴォォーー!!

次の瞬間、なんと小竜姫は炎を口から吹き出した

その勢いは凄まじく、ビッグイーターを全て焼き払ってしまう


「なっ……」

予想外の事態にほんの僅かな瞬間呆然となるメドーサの目の前には、小竜姫の剣が迫っていた

慌てて刺又で神剣を弾き、距離を取ろうとするメドーサだが小竜姫は離れない

ちなみにメドーサの刺又と小竜姫の神剣では、リーチが全く違うのだ

刺又は神剣より長い分、間合いが開けば有利だが、あまり接近されると不利である

メドーサの心の隙を小竜姫は見逃さなかった


「終わりですね、メドーサ…」

メドーサの首には小竜姫の神剣が突き付けられている

対してメドーサの刺又は、小竜姫に弾かれて地面に落ちていた


「小竜姫が炎を使うなんて初耳だね」

「竜が炎をはくのは当然だと思いますが? 未熟な私では竜の力を使いこなせないと思ったのですか?」

絶体絶命の状態にも関わらず、メドーサの瞳には力が残っている

小竜姫は油断する事無く、メドーサの問い掛けに答えていた


「竜神族は竜化を好まない。 自分達は神だという誇りがあるからね。 だから竜化どころか、竜の力すら使おうとしないはず… あんたが竜の力を使うなんて思わなかったよ」

メドーサの言葉は素直な疑問だった

神界のエリートで、若くして人界にある拠点を任されていた小竜姫

誰よりもプライドが高いだろうとメドーサは思っていた


通常竜神族は竜としての姿や力を全く使わないのが、神になった竜神族としての誇りである

昔の小竜姫も同様で逆鱗が弱点であり、竜化すればコントロールどころか意識を保てないほど未熟だったのだが、あれは竜本来の力を使う修業など全くしてなかったのが原因である

未来において神族としてのこだわりが薄れた小竜姫は、自分の弱点の克服と潜在能力の習得をはたしていた

メドーサはそんな神族である小竜姫が、竜本来の能力を使った事が不思議でならないのだ


「昔…、私は力にも善悪があると本気で信じてました。 勇気や愛や思いやりの無い力は滅ぶ… そんな事を言った事もあります。 甘いですよね。 神魔ですら善悪が無いこの世界で、力に善悪など無いのに……」

優しく語る小竜姫の表情は、まるで友達や仲間に見せるような表情をしている

メドーサはそんな小竜姫の言葉や表情に、なんと答えていいかわからない


「私の未熟なせいで、たくさんの命を失う結果となってしまいました。 私は、二度と同じ過ちを犯さないと誓ったのです」

小竜姫の真っすぐな瞳に見つめられたメドーサは、戸惑い理解に苦しむ

彼女の小竜姫のイメージとはまるで違う、どこか共感する部分まで感じる事に混乱してしまった



「私は死なない!」

メドーサは混乱したまま、死にたくない一心で小竜姫に魔力砲を放つ


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