真の歴史へ・その二

「随分飛ばすねぇ… 風水盤の影響で魔界の環境に近いこの場所では、あんたは居るだけで苦しいはず… 死ぬ気かい?」

神剣と刺又を交えたまま不敵な笑みを浮かべるメドーサに対し、小竜姫もまた笑みを浮かべる


「あなたが私が来るのを予想していたように、私は元始風水盤を予想してました。 事前に知っていた以上、当然対策はしてるでしょう?」

当然のように言い切った小竜姫は、周囲にある魔界の影響が全く感じられないような動きでメドーサを追い詰めていく


「クッ… こっちのパワーも上がってるのに!」

剣術のみで戦う小竜姫に押され始めたメドーサは、微かだが戸惑いを隠せない


そしてそれを見ていた美智恵もまた、驚きと戸惑いを感じていた


(強い… 魔界化の対策は当然としても、パワーが上がってるメドーサを相手に一方的に押してるなんて… 何故これほど戦い慣れてるの?)

死津藻比女の時は遠くて良く見えなかった、小竜姫の実力に美智恵は言葉も出ない

高いプライドと実戦での経験不足により、メドーサのような実戦的な相手は苦手なはずだったのだ


(過去に来る時点で、当然メドーサ対策はしてきたはず… 当面の敵はメドーサなのだから… でも、根本的な心の部分まで変わってるのは何故? 因縁の相手であるメドーサに対して怒りなどの心の変化が少な過ぎる)

そして美智恵が強さより気になったのは、小竜姫の言動である

神族の小竜姫の言葉に嘘が無い事を前提にすれば、メドーサにアシュタロス一派から抜けるように説得をしたのだ

神界のお尋ね者であるメドーサが素直に聞くはずも無い言葉だったが、小竜姫の性格上そこまで計算したとは思えない

なんと言うか、メドーサと言う悪を憎むと言う気持ちが小竜姫から感じられない

美智恵はそんな小竜姫の違和感に答えが見つからなかった



その頃、一足先に戦いを初めていた横島達は佳境に入っている

一見いい勝負をしているように見えた三組の戦いだが、明らかに黒岩達の方に余裕が無くなっていた


「はあ… はあ… はあ…」

横島から距離をとり呼吸を整える黒岩だが、横島に疲労の表情が全く見えない事に焦りを感じていた


(仮に小竜姫であってもある程度は戦えるはず。 たかが人間に何故…)
 
周囲に視線を送り戦況を判断しようとする黒岩だが、明らかに自分達に分が悪い事に気付く

ジョージとビルもいい戦いをしてると言えば言葉はいいが、見方を変えれば遊ばれてるようにも見える

互いに全力では無いのだが、根本的な自力の差が見え隠れしていた


(やはり小竜姫達には手を出すべきでは無かった…)

何かを決めたように考えを止めた黒岩は、再び横島に戦いを挑んでいく


「そろそろ限界かしら? 動きにキレが無いわよ」

一方余裕の笑みを浮かべるルシオラに対し、ジョージは苛立ちの表情で睨む

その時ジョージは何かを確認するかのように黒岩に視線を送るが、黒岩は静かに首を横に振る


「チッ…」

舌打ちをしたジョージは再び魔力砲をルシオラに放つが、軽々とかわされてしまう
76/100ページ
スキ