真の歴史へ・その二

背後からやって来た5体の石像は、雪之丞を取り囲むような動きをみせていた


「こいつは得意じゃないんだがな…」

少し困ったようにつぶやく雪之丞の手には、小竜姫のと同じ神剣がある

雪之丞は以前から小竜姫の指導の元で様々な武術の基礎は修行していたので、もちろん剣術も修行していた

しかし本来の雪之丞の戦闘スタイルとは違うし、武器を使う自体あまり好きでは無いようだった


ガチャ、ガチャ…

そんな雪之丞の事情など関係無い石像達は、取り囲むように一斉に攻撃を開始する


「おらっ!」

一斉に間合いを詰めて来た石像達に、雪之丞は神剣で斬りかかっていく


ガギッ!!


雪之丞の一撃は表面に大きなヒビが複数入るが、石像を斬り裂くほどの威力も技も無い

竜神の装備で小竜姫の力と、同じ神剣を使っている雪之丞だが、やはり力の使い方や剣術の差は大きかった


「やっぱり俺じゃあ斬り裂くのは無理か…」

元々得意では無い剣術なので、雪之丞にショックな様子は無い

小竜姫の圧倒的な強さを知るだけに、この程度の力の差は予想の範囲内である


その一方で石像達は、相変わらず多少の傷など関係無い様子で雪之丞に次々に攻撃を加えていく

雪之丞はその攻撃をなんとかかわして包囲されないように注意しながら、神剣で次々に石像達の表面を攻撃していった


「援護したいんだが、武器も無いし…」

そして背後の西条は雪之丞の援護をしたいのだが、武器は全て取り上げられており見ているしか出来ない


「大丈夫なのね。 多少苦戦しても、あの程度の敵に負ける事はないのね」

何も出来ず呆然としている西条の隣では、ヒャクメがそれぞれの戦いを記録しながら雪之丞の戦いも見守っている

そんな二人が見守っている中、雪之丞の連続攻撃により石像達の表面はボロボロになっていた


「そろそろいいな」

雪之丞は石像達から距離を開けると、霊波砲を石像達に連発していく

竜神の装備による強力な竜気の霊波砲が惜しみ無く石像達に降り注ぎ、ボロボロの表面を次々に吹き飛ばし石像そのものを破壊していった


「さすがにもう動けねえだろ」

霊波砲を撃つのを止めた雪之丞の前には、すでに石像の残骸しか無い

最早動ける形をしている者は無く、雪之丞の勝利だった


一方黒岩と横島の戦いは、膠着状態のまま互いに様子見の戦いを続けている

横島としてはこのチャンスに黒岩の実力を見極め、可能ならば生きたまま捕縛したい

しかしメドーサやアシュタロス一派の魔族がこの戦いを監視している可能性も考慮して、出来るだけ実力は隠しておきたいのだ

その結果、戦いは膠着状態のままなのである


「お前さ、いったい何の為に戦ってるんだ?」

無表情で戦い続ける黒岩に、横島は気味の悪さを感じていた

誰にでも戦うには理由があるし、それは神魔でも変わらない

借りに理性や知性の低い下級魔族でも、本能で戦っている


それに比べて本能的衝動も見えず、戦いに喜びを見出だしてる訳でも無い

ただ機械的に戦う黒岩は、明らかに異質であった


「………」

黒岩はそんな横島の言葉を無視したまま、攻撃を続けていく


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