真の歴史へ・その二

互いに戦闘体制に入り一触即発の中、横島の後ろに居たヒャクメが前に出た


「あなた達には神界上層部から捕縛命令が出てるのね! 大人しく投降しなさい」

命令書を見せて投降を促すヒャクメだが、もちろん黒岩達は見ようともしない


「我々が神族に従う必要は無い」

「必要があるから命令が下ってるの! 神魔両界で禁止されてる元始風水盤を勝手に作ってるのはわかってるのねー!!」

あまりにアッサリと必要が無いと言い切る黒岩に、ヒャクメはムッとしたように言い放つが相変わらず黒岩の表情は変わらない


「ヒャクメ、もういいよ」

横島は黒岩と睨み合うヒャクメを庇うように後ろに下げた

相手は普通では無いのだから、投降しないのは始めからわかっている

それにヒャクメの神族としての慈悲を相手が拒絶した以上、後は戦うしかないのだ



「ジョージ、ビル、お前達は女だ」

黒岩は仲間二人に指示を出して動き出すが…


「あなた達のペースで戦う気は無いわ」

黒岩が動いた瞬間、意味深な笑顔を浮かべたルシオラは手榴弾のような物を黒岩の前に投げた
 
 
プシュー!

とっさに距離を開ける黒岩だが、ルシオラが投げた物からは凄まじい煙りが吹き出す


「煙幕…?」

予想外の行動に黒岩達の動きは止まってしまう


「全く…、だから来るなって言ったのに…」

そんな煙りで視界がゼロの中、タマモは超感覚で動いて土角結界で捕われの西条の救出に来ていた

両手で複雑な印を組み、小声で素早く呪文を唱えるタマモ

「オン!」

彼女の声が周りに聞こえた瞬間、土角結界は消えていく

そして煙幕が晴れた時、西条はタマモにより救出されヒャクメの元に運ばれていた


「馬鹿な、土角結界は術者以外は解除出来ないはず……」

さすがの黒岩も土角結界を解除されたのは予想外だったようで、驚きの表情が浮かぶ


「あなたにも感情があったのね。 でも勉強不足よ。 どんな術であれ、仕組みを理解すれば解除するのは難しくないわ」

自信に満ちた笑顔で黒岩を射抜くように見つめるタマモだが

土角結界を文珠抜きで解除するのは、陰陽五行や風水術より遥かに古代の仙術の一部を使えるタマモにしか出来ないことだった
 
 
「クッ… やれ!」

今度は怒りの表情を僅かに浮かべた黒岩は、西洋のサーベルのような剣を抜き横島に切り掛かる

そして黒岩と同時に仲間の二人も、ルシオラとタマモを標的にそれぞれ攻撃を仕掛けてた


ルシオラの相手は白人のジョージ、彼は両手から魔力砲を放ってルシオラを攻撃する


(魔族!?)

先程まで気配や霊気は人間だったにも関わらず、ジョージの攻撃は魔力砲だった

ルシオラは驚きながらも攻撃をかわして、相手の情報を集めていく


「あなた人間じゃないのね」

「……」

ルシオラは連続して飛んでくる魔力砲をかわしつつ声をかけるが、返事は無い


(威力はたいしたこと無いけど、かなり魔力には余裕がありそうね)

威力は人間よりは高く下級神魔並だが、連続して撃ち続けられるだけの魔力量は下級神魔より上かもしれない

ルシオラはそんな分析をしながら、相手の実力を暴いていく


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