真の歴史へ・その二

その後慎重に進んで行く横島達だが、敵は先程と同じ石像が何度か襲ってくる程度だった

そして更に進んだ時、横島の視線の先には少し広い場所が見える


(あそこは未来でゾンビの大群が居た場所…)

ふと立ち止まった横島は過去を思い出してしまう

弱く何も出来なかった当時の自分が、怖い気持ちを必死に押さえながら令子を助けに行ったこと

今考えれば無謀にしか思えないが、少し懐かしい気もしていた


「この先に誰か居るのね… 三人… いえもっといる」

横島が立ち止まったのを少し不思議そうに見ていたヒャクメだが、この先に敵が居ることに気が付く


「いよいよお出ましか…」

「雪之丞はヒャクメの護衛をしなさい」

やる気を出す雪之丞だが、タマモにより護衛に回されてしまう


「わかったよ」

少し残念そうな表情をする雪之丞だが、特に文句を言う訳でも無く素直に従った

この辺りは未来と違い、集団におけるチームワークを理解している証である

小竜姫達との修行や除霊の実戦経験から、かなり教育されてるようだ



そして慎重に進んだ横島達が目にしたのは黒岩達3名と、土角結界に捕まった西条の姿だった


「動くな。 動けばこいつを殺す」

相変わらず無表情の黒岩は、首から上だけが生身の西条にナイフを突き付けている


『あのバカ…』

『彼が捕まったと言うことは、美神さん達も捕まったのでしょうね』

思わず念話で愚痴る横島に、小竜姫は令子と美智恵も捕まった可能性が高いことを指摘した


「それで、動かないとどうなるんだ? どっちにしろ殺すんだろ?」

「神族が人間を見殺しには出来ないだろう?」

横島は軽い調子で話すが黒岩は横島を無視しており、あくまでも小竜姫と話すつもりらしく小竜姫を見ている


「メドーサのアイデアですか? そんなに私が怖いなら逃げても構いませんよ」

小竜姫は笑顔で答えるが、その眼光はするどく黒岩を睨みつけていた


「挑発には乗らない。 人間を見殺しにするか、しないかだ」

一切表情を変えない黒岩を見て、小竜姫は一歩前に出て神剣を抜く


「あなたに殺される訳には行きません。 私には守らねばならない大切な人達が居るのです」
 
会話が全く噛み合わないまま小竜姫は竜気を解放して、黒岩は超加速を警戒するように意識を小竜姫に集中した


「お前だけ先に行け。 メドーサ様がお前を待っている」

小竜姫が本気なのを確信した黒岩は、静かに洞窟の先に行くように言う


「私は先に行きます。 後をお願いします」

瞬時に決断した小竜姫は、横島達に一言告げて先に進んで行く


「気をつけてな」

そんな小竜姫を見た横島もまた、一言の言葉を返しただけで先に行かせていた

この辺りは長い時を共に生きた、横島と小竜姫の信頼関係の賜物だろう



「こいつらには用が無い。 殺せ。」

小竜姫が見えなくなった頃、黒岩は仲間の二人に指示を出しいよいよ戦いは始まる

最早人質としての価値が無いと判断された西条はそのまま放置され、黒岩達三人と横島・ルシオラ・タマモの三人が戦闘を始めようとしていた

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