真の歴史へ・その二

地下への階段を降りて行く横島達だが、一歩一歩降りて行くたびに空気が変化していくのを感じていた


「空気中の魔力濃度が地上の倍になってるわ。 まだ人間でも戦えるけど、魔族の力も上がるわね」

バイザーを装備して周囲を分析するルシオラの言葉に、横島達の表情は真剣になる


「例の風水盤ってやつが動いてるのか?」

「そうね。 もう作動させてると思った方がいいでしょうね。 それに事前にテストもしてるでしょうし、これから先は魔力濃度が上がるわよ」

疑問を投げかける雪之丞にルシオラは簡単に説明をした


「竜神の装備は絶対外しちゃダメよ。 人間が魔界の瘴気なんて吸えば、戦うことなんて出来無くなるわ」

続けてタマモが最も重要な事を、雪之丞に念を押す

今回の戦いの対策の一つとして、雪之丞には竜神の装備が渡されている

これには雪之丞の身を守る事と、戦力アップの両方の目的があった

ちなみに対策としては、ルシオラ以外の者も瘴気対策と魔界の魔力対策をしている

まあ使わないに越したことは無いが、万が一の為の対策などはかなり考慮されていた
 
そんな感じで話しながら歩いていると、突然ヒャクメの足が止まる


「ヒャクメ?」

「誰か居るのね…」

何も無い地下通路の先にヒャクメは何かを見ていた

その表情の変化に、尋ねた小竜姫はすぐに神剣を構える


ガシャ…

ガシャ…

まるで固い物がぶつかりながら歩くような音と共に現れたのは、石で出来た人形だった

数も20~30体はおり、横島達の行く先をふさぐように立ち止まる


「ゴーレムか? いや、呪法で動いてるだけか?」

横島は相手を観察しながらも霊力を高めて、いつでも攻撃出来るようにしていた


「あれはまさか…」

小竜姫は動かない

未来での元始風水盤の事件には居なかった石像に警戒しているのだ

しかし、その表面はかつてのケルベロスと同じような素材であることに気が付く


「どうやら対霊処理を施した石像のようね」

同時に相手を分析していたルシオラも、その正体に気が付き暴いていた


『どういうことだ? 未来と違う』

同じ石像でありながらケルベロスと人型の違いを疑問に感じる横島は、念話でルシオラ達に意見を求める


『ケルベロスより厄介ね。 狭い洞窟では小回りが利く人型の方が有利だわ』

『基本的には未来で戦ったケルベロスと同じ素材のようです。 そういう意味では未来と同じですが…』

タマモに小竜姫と感じた事を話していくが、一致している事はケルベロスより厄介だと言うこと

狭い洞窟では巨大なケルベロスより小さな人型が有効だと言う結果であった


『確かに量産すればゾンビより使えるわ。 戦術的にも応用範囲が広い。 これは予想より危険ね』

ルシオラが気になったことは、石像が量産されてる可能性である

今の自分達では決して苦戦する相手では無いが、数は最も単純で有効な力である

自分達の力の消耗と時間稼ぎには非常に有効だと気がついていた

香港の魔界化くらいでは自分達は負けないが、人間界が混乱になり神魔の関係が悪化すれば……

再び悲劇が起きてしまう



「私が行きます」

小竜姫は一歩前に出ると、普段は隠している竜気を高めた

圧倒的な竜気と共に、普段は隠している角が現れる


「死にたくない者は退きなさい!」

静かな洞窟に小竜姫の声は響くが、石像達は小竜姫に向かって動き出す

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