真の歴史へ・その二

その頃美智恵達は、横島達とは別のホテルで作戦会議を開いていた


「先日の風水師誘拐事件ですが、車のナンバーは偽造でした。 当局に捜索を依頼してますが、多分無駄だわ」

美智恵はわずかな期間で集めた資料を見せながら西条と令子に説明する


「まあ、当然よね。 普通誘拐するなら車のナンバー偽造くらい私でもするわ」

車から手掛かりを掴めないことを、当然だと言い切る令子

防弾加工の車まで用意した連中が、ナンバーなどでヘマをするはずがないと思っている


「実行犯の方はわかりましたか? 手配中の黒岩伊知朗ではありませんでしたが…」

「現在オカルトGメン本部に問い合わせてるけど、オカルト犯罪の国際指名手配ではないでしょうね」

西条の問い掛けに答える美智恵だが、ふと考え込んでしまう


(ただのチンピラを使っただけなのかしら… それとも霊能力を使う裏の人間かしらね)

また現れたイレギュラーな存在に、美智恵は内心苛立ちを感じていた

それに理由は不明だが、自分の知る歴史からどんどん離れている事実に焦りもある


(落ち着かなきゃね。 悪いことばかりじゃないわ。 横島君達もアシュタロス戦までは目的は同じはずよ)

自分に言い聞かせるように心を落ち着かせる美智恵、皮肉なことに彼女の心を支えてるのは横島達の存在だった

同じ未来を知り、途中までは目的も同じはずだ

自分は横島達を最大限に利用して令子を守る

美智恵はそんな決意の元作戦を練っていく



一方横島達のホテルでは、雪之丞に今回の事件や敵の説明をしていた


「元始風水盤… そんなものがあるとはな……」

相手の首謀者がメドーサなのに驚きは無かった雪之丞だが、元始風水盤の説明にはさすがに驚きが隠せないようである


「今回の仕事は元始風水盤の阻止が第一目的よ。 可能ならばメドーサ及び黒岩などの捕縛」

ルシオラは元始風水盤の資料に続き、メドーサや黒岩達の写真を雪之丞に見せて説明をしていく


「あなたの身分は斉天大聖老師の部下のような扱いなのねー 今回の作戦による行動は全て神魔界の意向によるものであり、万が一あなたが人間界の法律に違反する行為があっても、人間界の法律で裁かれることは無いわ」
 
続いてヒャクメが雪之丞の立場について説明をした

これは横島やルシオラやタマモと同じ立場であり、万が一問題があっても人界の法律にかからないようにする為の措置である


今回は未来とは違い香港当局やオカルトGメンもメドーサの存在を知っているため、この戦いでの事後の責任問題などを回避するための措置であった

まあ実際は美智恵が余計なことをして、雪之丞にちょっかい出すのを防ぐ目的が大きいのだが……


「へー、そうなんだ」

少しポカーンとした表情で説明を聞く雪之丞は、自分の立場が少し不思議なようだ


「簡単に言うと、人間として戦うのでは無いと言うことです。 従ってGS免許も関係ありませんし、もし人間側の捜査関係者に何か言われても聞く必要はありません」

少し苦笑いを浮かべて説明する小竜姫の言葉を、雪之丞は驚きながら聞いていた
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