真の歴史へ・その二

それから時間が経過して日が暮れる頃、帰り支度をしたウォンが事務所から現れた

結局今日一日は何の成果も無かった美智恵達だが、西条と令子は少し疲れた表情でホッとしながらウォンが帰宅する後を尾行していく


繁華街の事務所からバスで自宅に帰るらしく、美智恵達もウォンと同じバスに乗り離れた席に座って監視する

しかし、その後も何の変化もなく自宅近くでバスを降りるウォン


この時西条と令子はもうすぐ今日は終わるだろうと思うと、ほんの僅かだが心に隙が出来る


そしてその瞬間であった

一台のワゴン車が突然ウォンの横で止まり、中から現れた白人と黒人によりウォンは拉致されてしまう

ウォンも突然の出来事に驚きながらも抵抗しようとするが、二人に力ずくで車に押し込まれていた


「二人共、撃って!」

すかさず叫んだのは美智恵である

自分はカメラで白人と黒人の写真を撮りながら、令子と西条に指示を飛ばす


「はい!」

「ちっ! まだ明るい時間だって言うのにっ!!」

あまりの堂々とした拉致に驚きを隠せない二人だが、美智恵の声に反応するようにワゴン車のタイヤを撃つ


バン!バン!バン!


連続して撃った二人の銃弾のうち何発かは確実にタイヤに当たるも、何故か弾かれてしまう


「ただのタイヤじゃない!? ならこっちはどう!!」

タイヤには効かないと悟った令子はガラスに向けて撃つが、こちらも銃弾を弾いてしまい、結局車はそのまま走り去って行く


「やられたわね…」

言葉とは裏腹に、美智恵の表情はそれほど悔しそうには見えない


「タイヤもガラスも防弾使用だとはな…」

あまりに堂々とした拉致と防弾使用の車に、西条は驚きながらも悔しそうに拳を握り締めていた


「ママどうするの?」

「これ以上の追跡は無理よ。 私達も警察が来る前にこの場所を離れるわよ」

疲れた表情でお手上げといいたげな令子に、美智恵は冷静に話してその場所を離れていく



その後西条と令子はそのままホテルに戻ったが

美智恵は車のナンバーの洗いだしと写真に写した白人と黒人の情報を集めるために、一人で夜遅くまであちこち走り回ることになる



一方拉致されたウォンは、メドーサのアジトに監禁されていた


「邪魔が入った? 小竜姫が来たのかい?」

黒岩からさきほど銃撃されたことの報告を受けたメドーサは、一瞬だけ表情を変えて問い掛ける


「いえ、小竜姫の関係者では無いようです。 ただ霊能者のようでしたが…」

黒岩自身は運転をしていたため顔は正確に確認してないが、仲間の話では横島事務所の関係者ではないという事だけは判明していた


「尾行はされなかっただろうね?」

「はい、尾行などはありませんでした」

メドーサは黒岩に確認をしつつ考え込む


「雑魚はどうでもいいから、針の作成を急ぎな。 それに元始風水盤の方も次の満月には間に合わせるようにアイツに言いな」

少し考えたメドーサだったが、小竜姫や横島ならともかく普通の霊能者など気にする必要は無いと思っていた


結果的に美智恵の行動により、メドーサは元始風水盤の計画を早める決断を下する

周辺が騒がしくなれば、必ず小竜姫が来ることを確信していたのだった


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