真の歴史へ・その二

同じ頃、横島の事務所では老師がパソコンでネットゲームに熱中していた


「老師、妙神山に帰らなくていんですか?」

少し苦笑いを浮かべて話しかけたのは横島である

実は老師は横島の事務所を訪れた日から居着いていたのだ


「構わん。 分身は置いて来たでな… それにおぬしらが居ない間の留守番は必要じゃろ?」

どうやら老師は近日中に香港に向かう横島達の変わりに、留守番をするつもりらしい


「まあ、おキヌちゃん達は残して行くんで、老師が居てくれるのは助かるんすけど…」

横島としては老師がネットゲームがしたいだけにしか見えないのだ

妙神山にネット環境など無いのだし


「ワシの行動が勝手なのは昔からじゃ、今更気にする者はおらんよ」

ニヤリと意味ありげに笑う老師を見ると、横島はかつての小竜姫の苦労が少し理解出来るようである



その頃、ルシオラの研究室ではルシオラとタマモとヒャクメが黒岩と他2名の正体を調べている真っ最中であった


「やっぱり無いわね」

ルシオラがあちこちの犯罪者データバンクなどにハッキングして、ヒャクメとタマモで手当たり次第に探しているが成果が無い


「犯罪歴の無い一般人なら探しようが無いわね… 第一、黒岩以外は顔写真が数枚じゃあね」

探すと言っても顔写真を比べて探すしかないことに、タマモは思わず愚痴をこぼしていた


その顔写真もワルキューレ達が持ち帰ったものであり、かなり遠くから撮影された写真である

少し整形でもしたら、仮に本人でも見逃す可能性があった


「う~ん、私の心眼も捕まえて近付かないと記憶は覗けないのねー」

少し疲れた表情で語るヒャクメ

その能力は確実なのだが、さすがに他人の記憶を覗くのは簡単ではないらしい


「正直ただの人間じゃないんだし、正体を探すのもあまり期待は出来ないわよ」

休憩がてら自分の考えを話すルシオラは、この作業にあまり期待はしてない

無駄かもしれないが可能性がある以上探すしかないと言うのが彼女の考えであり、正直これで正体が掴めるとは思ってないようだ


「今回の事件で誰か一人でも捕まえられたらいいんだけどね」

やはり捕まえるのが一番確実であり、簡単なのだとタマモは思っている



そしてルシオラの研究室の近くでは、小竜姫が今日も雪之丞とおキヌと小鳩に霊力を扱う基礎の修業を教えていた


あれから毎日修業をしてきた結果、おキヌと小鳩も自分の体内の霊力を感じることはすでに出来ている

そして今は、霊力を高めることに主体をおいて修業を進めていた


「二人共、心を静めて霊力を高めて下さい」

言われた通りおキヌと小鳩が霊力を高める様子を、小竜姫は霊視しながら見ていく

不自然な霊気の流れなどがあれば逐一指導するのだから、普通の霊能者からしたら贅沢としか言いようが無い環境だ


二人は昔の横島と違い変な癖も無い為、小竜姫の教えを素直に吸収していた

そして小竜姫自身、そんな才能ある若者を育てるのが楽しいようである


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