真の歴史へ・その二

その日の夕食は老師のリクエストで中華料理にしたが、それは凄まじいことになっていた

競うように料理を食べまくる雪之丞と貧に、周りの客の視線が集まりルシオラ達とおキヌや小鳩や愛子は少し恥ずかしそうだ


「美味い! 美味い!」

「姉ちゃん、エビチリ3人前追加や!」

横島達は食べ終わったが、まだ食べる気満々な雪之丞と貧に一同苦笑いを浮かべる


「貧ちゃん…」

小鳩は貧を止めたいが、食べるなとも言えずに困っていた


「二人とも食べるのはいくら食べても構わないけど、もっと綺麗に食べなさい。 特に雪之丞、あんたは人間なんだから最低限のマナーを覚えなさいよ」

たまらず声をかけたのは、横島達の中で一番俗世間に詳しく馴染んでいるタマモである


横島自身はタマモ達の影響で食べ方などは普通になったが、元々細かいことは気にしない性格なのであまりマナーなどは言わない

ルシオラと小竜姫は自分のマナーは気にするが、あまり雪之丞には言うことは無く

必然的に雪之丞に日常生活でのマナーや常識はタマモが教えていた


これに関しては、やはり前世を含めると人間社会との関わった期間が長い分、タマモが気にするようである

人間社会を生き抜く上で、いかにマナーや常識が必要か理解しているのだろう


「わかってるよ… でもなんで俺だけなんだ? 差別だ差別…」

同じように食べていた貧より一言多かった事に雪之丞は抗議するが…


「あんたね… 貧は神様なのよ。 それに人間って言うのは、見た目や仕草で相手を決め付けるのよ? いずれ独立したらあんたが苦労するんだからね」

困ったような笑みを浮かべてお説教するタマモに、横島はクスクス笑ってしまう

雪之丞に関しては未来でのイメージもあるため、横島としてはマナーや常識を持った姿が想像出来ない


「横島! 笑い事じゃないわよ!」

「まあまあ、いきなりは直らんさ。 いずれは必要なら身につくしな」

クスクス笑った横島に怒るタマモだが、横島は逆にそろそろ仲裁しようとタマモをなだめる


「お待たせしました~ ご注文のエビチリと北京ダックです」

新しい料理が運ばれて来ると、また雪之丞と貧は競うように食べはじめる

注意された二人だが、料理を前にすれば忘れるらしい


「これはダメだわ…」

ため息と共にこの日は諦めるタマモであった



そしてその日の夜、ルシオラの研究室に一同が集まっていた

横島達四人に、老師にヒャクメ、それと原始風水盤の調査から戻ったワルキューレとジークも居る


この日老師がわざわざ横島の事務所を訪れた理由は、ワルキューレ達との対面が主な理由であったのだ


お互い自己紹介をするが、ワルキューレとジークは少し戸惑った様子である

神界の実力者である老師が、まさかこうも簡単に横島の事務所に来るとは思わなかったようだ


「妙神山にこれだけの神魔が集まれば、少し目立つのでな… ここならワシが道楽で遊びに来たことでごまかせる」

ニヤリと意味ありげな笑みを浮かべる老師

神界が近い妙神山では、他の神族に気付かれる可能性が僅かにある

そのリスクを回避しつつ、人界を楽しむ

ある意味老師にとってはこれ以上無いくらいの好条件であった


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