真の歴史へ・その二

「貴様! 一体何者だ!?」

鬼道父は怒りと憎しみを小竜姫に向け、今にも襲いかかろうとしていた



「相手を見抜く力が無いとは恐ろしいものね…」

「ええ、猫と虎の区別も付かないような愚か者だわ」

一方、そんな様子を静かに見つめていたルシオラとタマモは、小竜姫の逆鱗に触れてしまった鬼道父に呆れている


そして果たし合いがうやむやのうちに終わってしまった冥子は、式神達が帰って来てホッと安心しており

母親の冥菜は小竜姫と鬼道父の様子を面白そうに見つめていた


「六道さん、これ正当防衛ですよね?」

「もちろんよ~ それに~、オカルト犯罪防止法で、逮捕も可能よ~?」

そんな中、横島は冥菜に現状を確認した

六道にとってこの果たし合いが、あまり意味の無いことは横島も承知している

鬼道家に勝ったところで誰もが当然だと見るだろうし、夜叉丸一体手に入れたから損はしてない


だが、古くからの習わしであることは確かなのだ

それを小竜姫ではなく、鬼道親子がぶち壊しにしたのをはっきりさせる必要はあった


もっとも、冥菜は初めからそのつもりだったようだが…

小竜姫の正体を知る彼女が、わざわざ逆らうことはしないだろう



「愚か者に仏罰を下すのも私の使命。 まだ人の心が残ってるならおとなしく神の裁きを受けなさい!」

小竜姫は鬼道父に向けて竜気を解放する

そしてその凄まじい力に鬼道父の表情が一変した


「なっ… なっ…」

腰が抜けたように倒れ込む鬼道父

突然の強大な力に一瞬で戦意を失ったようだ


「まだ、名乗ってませんでしたね。 私は竜神族の小竜姫。 元妙神山管理人と言えばおわかりでしょうか?」

そう告げて小竜姫は殺気を込めた竜気を鬼道父に叩き込む


「妙神山の小竜姫…」

一方、小竜姫の一撃で夜叉丸を失ったショックで呆けていた鬼道は、その正体を知り諦めたようにその場に座り込む


「しっ… 神族!? ヒィィーー!!」

小竜姫の正体を知った鬼道父は真っ先に逃げ出してゆくが…


ドン!


前も見ないで逃げ出した鬼道父が何かにぶつかったかと思い前を見ると、そこに小竜姫が立っていた


「あなたと言う人は… 息子を置いて1人でにげだしましたね…」

「ヒィィ……」

小竜姫の言葉を聞き終える前に、鬼道父は恐怖で気を失ってしまう



「小竜姫様~ 後はお任せを~」

その後、冥菜の指示で気絶した鬼道父をメイドが縛り上げて連行していく


「あの愚か者が起きたら伝えて下さい。 今後、二度と霊能力を使うことは許しませんと」

冥菜は小竜姫の言葉に笑顔で頷きながら、内心では小竜姫への対応は細心の注意が必要であると改めて心に誓っていた



同じ頃、冥子は鬼道に夜叉丸を返していた

「冥子いらない~ 夜叉丸ちゃんも、マーくんと居たいと思うし~」

その言葉と行動で鬼道は、小竜姫が言った言葉の意味を理解する


「冥子はん…」

あそこまでした自分に式神を返した

それが冥子の優しさであり長所なのだろうと、鬼道は理解したようである


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