真の歴史へ・その二

同時刻、事務所内部に甘い匂いが立ち込めていた


「ん~♪ なかなか上出来ね」

タマモはオーブンを覗き込み微笑む


シャカシャカシャカ…


隣では愛子がクリームをかき混ぜていた


「このくらいでいいかしら?」

愛子はペロリと味見して確認する


「どれどれ~ うん! バッチリよ!」

タマモが自分も味見してオーケーを出すと、愛子は冷蔵庫から果物を取り出しカットし始めた


どうやら2人はケーキを作ってるらしい


「休日にケーキを作る。 これも青春ね!」

愛子は嬉しそうに言い切る


「将来はケーキ屋でも開けるかもね」

タマモは青春を満喫する愛子に笑っていた


「私は学校の先生になりたいのよね~」

愛子は目を輝かせて夢を語る


「あなたならなれるわよ。 誰よりも子供達を見つめてきたあなたならね」

タマモは優しい視線を愛子に向けた


「タマモさん達は将来どうするの? ずっとGSを続けるの?」

愛子はタマモの言葉に嬉しそうに頷いて、逆にタマモに将来を聞く


「うーん、どうだろ…? 私達は目的があるのよ。 その為にはGSが都合がいいからやってるのよね~ 目的が終われば辞めるかもしれないわね」

タマモは愛子の質問に少し驚いたが、ゆっくり語った

特に話し合ってる訳じゃないが、全てが片付けばどこかでゆっくり暮らしたい

タマモはそう思っている


実際横島がGSになったのは、アシュタロス戦とその後の神魔戦争を防ぐ為なのだ


「ふーん、横島君も最初会った時言ってたわよね。 敵は運命だったって…」

愛子はタマモの語る目的と言う言葉が心に残っている


「ええ、かつての敵は運命だったわ。 特に私は遅すぎたの… でもね、今度こそ運命を変えてみせるわ。 今なら間に合うのだから…」

タマモの力強い言葉と瞳は、かつて横島が愛子に語った時と似ている気がした


「横島君やタマモさん達を見てると不思議だわ… 不可能が無い気がしてくる」

愛子はふと微笑む

初めて会った時は半信半疑で横島の途方も無い話を聞いていた

だが、今なら横島やタマモの話は真実なのだと思える


「私は不可能は無いって信じてるわよ。 出来るって信じなきゃ、可能なことも不可能になるもの」

タマモは当然のように言い切った

愛子はそんなタマモの心の強さを少し羨ましく思う


かつての自分は現実から逃げて、自分の中の世界に浸っていたのだから…

そんな愛子はタマモが眩しく見えた


「愛子も信じれるようになるわ。 あなたは最も人間をよく知る妖怪なんだからね」

羨ましそうな愛子にタマモは微笑んで語る


かつてタマモに不可能は無いと教えたのは横島だ

存在は人間を超えても、最も人間らしい人間


人間社会に生きる愛子

彼女もいずれそれを知るだろうとタマモは思う


「さて、おやつの時間の前に仕上げちゃいましょう」

タマモと愛子は焼きあがったスポンジにクリームを塗り、フルーツを乗せてケーキを作っていく


「タマモちゃん、まだなのね~?」

3時には少し早いが、美味しそうな匂いに我慢出来なくなったヒャクメがやって来た


「ヒャクメさん、もうすぐよ」

タマモは少し苦笑いしてヒャクメを見る


「こんな美味しそうな匂いの中待つのは、ある意味拷問なのね~」

ヒャクメは待ち遠しい様子でタマモと愛子を見た


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