真の歴史へ・その二

「横島さんって不思議な人ですね」

小鳩は小竜姫の話を聞いてふと微笑む


「まあ、普通じゃねぇのは確かだな… 俺らとほとんど変わらない年なんだが…」

雪之丞も改めて考えると、横島の特異性に気が付く

まあ、神族や魔族や妖怪の中心にいる人間なのだから…


「まだ話せないことがたくさんあります。 ですが、皆さんはいずれ知る日が来るでしょう。 私達の事を… それまでは私達を信じて下さい」

小竜姫はおキヌ達に優しく微笑みを向ける


「私は信じてます。 今の幸せは横島さんや小竜姫さん達に頂いた物ですから」

おキヌは迷うことなく返事をした


「はい」

「ああ」

小鳩や雪之丞も気持ちは同じらしくおキヌと同時に頷く


「雪之丞さん、細かく霊力のコントロールをして下さい」

小竜姫はおキヌ達の返事に嬉しそうに微笑み修行に戻る


「苦手なんだよな~」

雪之丞は苦笑いを浮かべて苦闘する


「力のコントロールと効率化は全ての基礎です。 必要な時に必要な分だけ霊力を使う。 それが戦いにおいて重要なのですよ」
 
小竜姫は苦闘する雪之丞に霊力の使い方を導きながら説明する


「GSはみんなそこまで出来るんですか?」

おキヌは令子を思い出し、ふと疑問に思ったようだ


「いえ、現代の一般的なGSはそこまで細かくは出来ません。 例えば美神さんでも大まかな強弱をつけるくらいがやっとでしょうか…」

小竜姫はおキヌにわかりやすいように、令子を思い出して伝える

「ただ、人間が神魔のように強力な存在と戦うには必要です。 攻撃や防御にしても、霊力を高めるだけでは無駄に全身に霊力を使います。 ですが、同じ霊力でも一点集中すればより強力になります。 このように、必要な部分だけ霊力を使うのは戦いや術の基礎です」

小竜姫の説明を聞いても、おキヌでは正直どれだけ難易度が高いかわからないようだ

ただ一流と呼ばれる令子より難しい修行をする雪之丞が、すごいのは理解したようである


「雪之丞さんは凄いですね~」

小鳩は自分より遥か難しい修行をする雪之丞に感心した


「いや…、俺は細かいコントロールは苦手なんだ」

誉められた雪之丞は微妙に顔を赤らめてしまう
 
女性に誉められるのが初めてなようだ


「雪之丞さんは人間では十分強いんですよ。 横島さんを抜かせば、霊的格闘では日本でトップ3には入りますよ。 まあ、その分、通常の除霊は見習いレベルですが…」

小竜姫は後半苦笑いを浮かべて、雪之丞の実力を的確に評価した


雪之丞は元々、白龍会で霊的格闘の基礎を積んでいた

横島の事務所に来て以来、小竜姫達の徹底的な修行により驚異的に実力をあげている

しかし、それは霊的格闘に限ってである

元々、強くなりたい一心で生きてきた雪之丞

知識が乏しく、繊細かつ細かな作業を要求する通常の除霊は苦手なのだ

横島や小竜姫達が現在頭を悩ませてるのはその点である


戦士としては合格は近い

しかし、GSとしてはまだ一般的な見習いレベルを超えてないのだ


「強い奴と戦うのは得意なんだがな~」

雪之丞は少し困ったようにつぶやく

どうやら自覚はあるようだ

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