真の歴史へ・その二

「そうもいかないよ。 一般市民を守るのが僕達の仕事だからね」

市民を守るなど頭にない令子に、西条は困ったように説明する


「まあ、それはいいわ。 結局移動するのね?」

「ああ、準備をしてくれ」

令子はため息をつき、嫌そうな表情をするが準備を始める


「令子ちゃんは公務員に向かないな…」

西条は準備に向かう令子を見ながら疲れた表情でつぶやく



それから1時間後、西条と2人の令子は車で都内を走っていた

後部座席やトランクには様々な除霊道具が積んでおり、中には銃火器まである

銃火器は令子の個人事務所で積んだ物であった

その違法な銃火器に西条の顔はかなり引きつっていたが、事態が緊急をようする為に目を瞑ることにしたようだ


それから車を走らせること数時間

西条達がたどり着いたのは、奥多摩の山奥であった

そこにある一件の古いレンガ造りの家の前で車は止まる

ざっと見ても築50~60年は軽くたってそうなその家

見た目はあちこち朽ち果てており、庭らしき跡はあるがこちらも荒れ放題だ


「ここに隠れるの?」

令子はあまりに無防備なその家に不安を覚えた


「ああ、この家は少し変わってるんだよ」

西条は自信ありげな表情で車を降りて荷物を室内に運ぶ


「ボロボロのおうちだね…」

小さな令子は素直な感想を話す


「西条さんも何考えてるのやら…」

令子は少し不安そうに西条を手伝い始める


だが、家の中は更に酷い状態であった

元々立派な家だったらしく、ボロボロの割には中はしっかりしているが

ほこりや蜘蛛の巣などが凄まじく、令子は一晩でもここに居るのが嫌でたまらない

「令子ちゃん、こっちに来てくれ。 良いものが見れるよ」

西条が令子を家のある場所に案内すると…

「これは…、なんでこんなものが此処に?」

令子は驚き西条を見る


「僕も詳しく知らないよ。 昔の知り合いが偶然見つけた家だからね」

驚く令子に西条は笑顔で説明する


「これならいけるかもしれないわね…」

先ほどまでとは違い、令子は希望に溢れた表情になる


「そうだろ? さっそく準備をしよう。 少し掃除も必要だしね」

西条は令子の表情が良くなってホッとしたように準備を始める


「でも、よくこの短時間にこんな場所見つかったわね?」

「まあね… 昨夜の襲撃の後始末の最中に、友人から心配の連絡があってね。 その友人が教えてくれたんだ」

驚き不思議そうな令子に西条は種明かしをする


西条とてこの場所を知ったのは偶然であった

マスコミがテレビで騒がなければ、友人が連絡をくれることも無かったし

こんな場所を知ることも無かっただろう


まさに不幸中の幸いな出来事であった


令子と西条は、日暮れまで残り少ない時間で急いで準備を進める


令子と西条は理解していた

今夜必ず奴が来ると…

こちらの準備が整い、怪我が回復する前にまた襲ってくる可能性が高いと言う現実を

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