真の歴史へ・その二

「合わせる顔が無いわね… 下級魔族すら満足に戦えなかったなんて…」


元々、お金にならないこの戦いに令子は乗り気で無い

しかし、いざ戦えば勝つ自信はあった


自分は業界トップクラスのGSだ!

その高いプライドから、下級魔族程度なら多少面倒でも勝てると考えていた


しかし、結果は惨敗…

事前に魔族の襲撃を知っていながら、相手に裏をかかれて逃げられるなど問題外である


「まあ、今回の魔族は下級魔族の割には強いよ。 普段人界にいる魔族とは一味違ったからね」

西条は、悔しそうに呟く令子を慰めるように話すが、令子は気が収まらない


元々、母親譲りの天才と言われ、高い才能に甘えて来た令子


母親のようなGSになりたいと思って目指してはいたが…

いつの間にか楽にお金を稼ぐ手段でしか無かった


師である唐巣はそんな令子に、何度も霊や妖怪や魔族の意味を教えるが…

令子は一切聞かなかった


GSはビジネスである

そんな価値観を自分で構築して、お金の為に悪霊や妖怪を駆除していく

令子にとっては、ゴキブリなどの害虫と同じような感覚であり、除霊の意味も理解してない


哀れな霊を輪廻転生させるなどの知識はもちろん知ってはいるが…

令子にとっては建て前でしかないのだ


そんなGSを舐めきっている令子にとって、見下していた下級魔族すら倒せない自分は許せない



未来では、横島やおキヌと共に数々の悪霊や魔族と戦い

GSとして、心身共に少しは成長していく令子


しかし、横島が令子の元に行かなかったことにより成長をして無いのだ

横島と言う支えの無い令子は、他人を一切寄せ付けず

嫌なことからは逃げて、自分の価値観のみで生きている


寂しさや孤独を紛らわすようにお金を求め、そのお金が令子に実力以上のプライドを与える

まさに負のスパイラルであった


この時代では、少し前に美智恵や西条が現れ、令子の孤独や寂しさは埋まるが…

お金好きな性格は治らない


その上、当然のように甘えれる美智恵や西条の存在により、令子はより一層自分勝手な性格になる


美智恵が子供の頃から教え込んだ

強く生きるという部分まで、甘えにより無くなっている


今の令子は才能にあぐらをかく、三流のGSでしかない



そんな令子は、人一倍高い自分のプライドを傷つけられた今回の戦いに、やり場の無い怒りを溜め込んでいる

西条に八つ当たりをする訳にもいかず、かと言って我慢も出来ない


「令子ちゃん、落ち着いて考えよう。 今は明日まで乗り切る事だけを考えよう」

西条は令子を宥めて、落ち着かせようと優しく語りかける


「わかってるわ! でも気が収まらないの!」

令子とて今大事なのは、明日までどうするかと言うことは理解している

だが我慢の出来ない令子は、傷ついたプライドと溜まった怒りをどうしていいかわからない


「令子ちゃん…」

自分の感情もコントロール出来ない令子に、西条はかける言葉が見つからない


(令子ちゃんは変わったな… 何があればあの素直で可愛い令子ちゃんがこんな性格になるんだ?)

西条は元々子供の相手が苦手である

子供以上に子供らしい令子を、西条はどうすることも出来ない


かつての令子を思い出し、西条はしばし現実逃避する


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