「それはわかってるけど…」

ヒャクメとて未来を見たのだ

危険なのは理解していたが、それでも小竜姫の修行は怖かった


「ヒャクメ、歴史は変わり始めている。 俺達はお前に死んで欲しくないんだ…　二度とな…」

横島は悲しみの瞳でヒャクメを見ていた


未来では、横島達４人以外はみんな死んでしまった

横島達はそんな未来を変える為に動いている

そして変わり始めた歴史では、ヒャクメがアシュタロスとの戦いを、生き残れるか不安だったのだ


「ヒャクメ… 私もあなたに合わせた修行をさせますから、頑張ってみませんか？」

小竜姫は横島の表情と言葉に冷静になり、優しくヒャクメに話した


「小竜姫…、わかったのねー！ 私頑張るのね！ でも、優しくして欲しいのねー」

ヒャクメは悩んで決心したように話したが…

やはり怖いようだ



「ここは皆さん幸せそうですね…」

横島達やヒャクメのやりとりをみていたジークは、少し羨ましそうに見ていた


「ジークもいつでも休暇に来てくれよ。 この先厳しい戦いが続くからな」　
横島はジークに笑顔で話していた


「はい、ありがとうございます」

ジークは相変わらず、少し堅苦しい挨拶をしていた


「そう言えば、ワルキューレはどうしました？」

小竜姫はふと思い出して聞いた


「姉上はしばらく任務続きで会っておりません。 会ったら事情を話そうとは思ってるのですが…」

ジークは少し困ったように話した


「ワルキューレは優秀だからな…」

横島達は懐かしそうに、未来でのワルキューレを思い出していた


「原始風水盤の件の前には事情を話すつもりです。 あの事件はかなりヤバいですから」

ジークとしては事が重要なので、直接話すしかない

万が一、第三者に秘密がバレたら大変なことになるのだから…

そのため、原始風水盤の前にワルキューレに会おうと考えていた


「ああ、頼むな。 黒岩の正体も不明だし、原始風水盤が前の歴史と同じ場所だとは限らない。 ジークとワルキューレには香港の情報収集など、協力してもらわないとダメだからな…」

横島は原始風水盤の下調べなどの、情報収集はジークとワルキューレに頼もうと考えていた


香港にはメドーサやアシュタロス一派の魔族が数人居る可能性もある


横島達は、横島と小竜姫がメドーサに顔をしっかり見られている

それにルシオラとタマモも天龍童子の時に、顔を見られてる可能性が高かった


相手に見つからずに情報収集するなら、顔が見られてないジークとワルキューレが適任なのだ


能力的にはヒャクメが一番なのだが、戦闘力が弱すぎる

相手がメドーサなら、いつ戦闘になっても不思議ではない

ヒャクメでは不測の事態に適応出来ないのだ

それに、一番の問題は隠密行動に向かない性格だった…


「わかりました。 最高指導者様に、伝えます」

ジークは堅苦しく敬礼した


ジークとヒャクメは現在も最高指導者の密命を受けて動いている

そのため、特殊任務として最高指導者に直接報告をしていたのだ


「ああ、頼むな。 歴史は少しずつ自然に変えて行かなければならない… 歴史の復原力が働かないようにな…」

横島は難しい表情で語っていた


横島達は歴史を知るが、かと言って原始風水盤のような重要な事件は完全に防ぐのは難しい

仮に今すぐに香港を押さえても、場所が変わるだけだろう


大きな事件は歴史の復原力で、何らかの形で必ず起こる

ならばあまり歴史を変えずに、変える必要がある部分だけ変えるしかないのだ

少しずつ歴史を変えて、望む未来に近づけなければならない


「歴史の復原力ですか… 実際に詳しくわからない力を気にするのは、難しいですね…」

ジークは困ったように呟いた


「その件に関しては、私が研究してるわ。 復原力は急激な歴史の変化に働くのよ。 一回で全てを変えようとするのは無理なのよ。 かつて、アシュ様も復原力に苦しめられたのだから…。 私達は、アシュ様との最終決戦までに時間をかけて変えるしかないの。 時間をかければ、限りなく理想に近づけるはずよ」

ルシオラは困った様子のジークに説明した