真の歴史へ

辺りは先ほどまであった死津藻比女の妖気が無くなり、清々しい山々に戻っていた…


そして、横島達は死津藻比女の全滅を確認して地上に降りた


「みんな、お疲れさま」

横島は一仕事が終わり、笑顔でねぎらいの言葉をかけた


「やっと終わりましたね…」

小竜姫は先ほどまでの厳しい表情とは、全く違った笑顔になっていた


「馬鹿よね… 静かに山奥で生きてれば良かったのに」

タマモは呆れた様子で呟いた


「元々は本能しかない下級妖怪よ… 地脈の力が無きゃ何も出来ないのよ」

ルシオラはホッとしたようにタマモの呟きに答えた


「横島だけは敵にまわしたらダメだな…」

雪之丞は横島達の非常識な強さをシミジミ感じていた

今まで修行ではわかっていたが、実戦で改めて感じていた



「さて、おキヌちゃんを生き返らせるか」

横島はそう話して、おキヌと道士と合流して、遺体がある祠に向かった


「本当に生き返るのか?」

半信半疑な雪之丞が不思議そうにしていた

「はい、道士は始めから全てが終われば、反魂の術でおキヌさんを生き返らせる準備をしてました。 古文書にも全て書かれてました」

小竜姫はそんな雪之丞に説明していた



横島達が祠に向かっている頃…



美智恵は呆然と空を見上げていた


「死津藻比女を一刀両断するなんて… あの霊波刀はどれだけの力があるの…?」

美智恵は先ほどの戦いを思い出して、考えていた


「あれだけの力があれば、令子を守るのも難しくないはず… 嫌われたものね…」

美智恵はシミジミ呟いた


あれだけの戦力があれば、令子を守るのは難しくない

まして、未来を知るなら…


それなのに、見放された令子を思い出してため息をついた


だが…美智恵は知らないのだ


未来で自分と娘がどれだけ勝手な行動をしたのかを…


そして、横島達が一番警戒しているのがまさか自分だとは…


美智恵は気がつかなかった…


美智恵は今後の対策をたてる為に、急ぎ帰っていった




横島達はおキヌの遺体がある祠に来ていた

「おキヌよ。 先ほども説明したが、死津藻比女を滅ぼした今、お前は生き返ることが出来る」

道士は横島達が戦っている間に、過去の記録を見せて、反魂の術の説明をしていた


「はい… ですが… 記憶が…」

道士の反魂の術は記憶まで定着出来ない

やはりおキヌは記憶を無くすのを恐れていた…


おキヌは記憶を無くして生き返るのをためらっていた

そして道士は困ったように見ている…


「大丈夫ですよ。 出てきなさい! 山の神!」

小竜姫はおキヌに優しく微笑んで、叫んだ


キィィィーン!!


小竜姫の言葉に応えるように山の神が現れた


「久しぶりっすね… おキヌさん」


そう、彼はワンダーホーゲル

かつて、令子がおキヌの代わりに山の神にした人だった


「あなたはあの時の…」

おキヌは突然現れたワンダーホーゲルに驚いていた


ワンダーホーゲルはおキヌに笑顔を見せると小竜姫の前にひざまずいた


「お呼びでしょうか」

ワンダーホーゲルは小竜姫にひざまずいたまま話した


竜神族の小竜姫と、新米の山の神のワンダーホーゲルでは神としての格が違った


ワンダーホーゲルは死津藻比女が地脈から離れたら、戦いを見て小竜姫が竜神なのに気がついていた


「おキヌちゃんの反魂の術を行います。 あなたは地脈の力をおキヌちゃんの体に注ぎなさい。」

小竜姫は武神らしく凛とした表情でワンダーホーゲルに命じた


「あの… 小竜姫さん… 私…… 記憶を失うならこのまま……」

おキヌは申し訳無さそうに小竜姫に話した


「記憶なら心配いりません。 地脈の力と私の竜気を使って、体に今の記憶を定着させます。 そうすれば次に目を覚ましたら記憶がありますよ」

小竜姫は優しく微笑んだ


「知ってたんですね……」

おキヌは感動で涙を流していた…



横島達はおキヌの記憶の問題をすでに解決していた


地脈と竜気の膨大な力で、おキヌの霊体と肉体の波長を安定させるのだ…


これは横島達ではなく、小竜姫にしか出来ない技だった

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