平和な日常~冬~2
さて店に戻った横島は営業を再開していたが、主婦向けの料理誌を見ながら今晩の夕食の献立と明日のさよの弁当を考えていた。
「晩飯どうすっか」
受け継いだ料理のレパートリーが多彩な横島といえども、やはり日々の献立は悩むらしい。
基本的には店の余った食材プラスアルファで夕食を作ってはいることもあり、流石に毎日だと悩んでしまうようである。
「寒いからやっぱり温かい物がいいわね」
「たまには中華も良くない?」
「クラムチャウダーとかもいいなぁ」
店内は相変わらず女子中高生を中心に賑わっているが、横島の周りにはやはり美砂達が座っていてそれぞれに夕食で食べたい物を主張していた。
彼女達もまたほとんど毎日夕食を食べに来ているので、割と食べたい物を主張することが多い。
人数が増えて以来夕食にも最低限の食費を取ったことが、逆に彼女達が来やすくなったという事実もあるが。
元々一緒に夕食を食べる木乃香達はハルナを除いて割とリクエストを言わないので、美砂達のリクエストは比較的通りやすかった。
「クラムチャウダーに中華か……」
最もその日店に余ってる食材次第なので横島は現在ある食材を思い浮かべながら献立を考えるが、そこに先程那波重工に居た千鶴が発砲スチロールの箱を三つほど持参して店にやって来る。
「うわ~、それなに?」
「帆立よ。 五十枚はあるって言ってかしら。 さっきお父様達に貰ったの」
発砲スチロールの箱は中身が水産物のようで、千鶴も店の前までは車で送ってもらったらしい。
その大きな箱に美砂達のみならず横島や木乃香達も集まっていくが、明日菜が中身を尋ねると千鶴は箱を床に置き開けて見せるが中には新鮮な帆立貝が大量に入っていた。
「どうしたの? こんなに……」
「お父様が頂いた物なんだけど、食べきれないからって半分貰ったのよ」
突然大量の帆立貝を持ち込む千鶴に誰もが当然の疑問を抱くが、どうやら両親が頂いた物らしい。
木乃香同様にあやかと比べると庶民的な千鶴だが、やっぱり実家はお金持ちなんだと周りの少女達はシミジミと感じる。
「マスターなら貝付きの帆立も調理出来ると思って。 今日の夕食にみんなで頂こうかと思ったんだけど」
箱の中の帆立はまだ生きてるようで貝が動く物もあり、なかなかお目にかかれない生きた帆立に少女達とタマモは興味津々な様子だった。
特に生きた帆立を初めて見たタマモは、指でつんつんと突いてみたりしており楽しげである。
「調理は出来るけど、いいのか? 買えば結構高いぞ」
「いいのよ。 いつも安くご馳走になってるもの」
千鶴の差し入れで今晩のご飯が決まったと美砂達なんかは喜ぶが、流石に横島は安くはない物なので一応確認はしてみる。
まあここまで持って来た物をやっぱり止めたと言うとは横島も思ってないが。
「そっか。 そんじゃ有り難く使わせてもらうよ」
いつもの如く柔らかい笑顔で使って下さいと言う千鶴に横島は素直に受け取り厨房に運ぶが、千鶴はそんな横島を何処か嬉しそうに見つめていた。
ついさっき横島との関係を考えさせられる話が祖母からあっただけに、千鶴は少しだけ不安な気持ちが胸に残っている。
帆立を貰ったのは偶然だろうが、そのまま店に来て横島の顔を見た千鶴は素直にホッとしていた。
「晩飯どうすっか」
受け継いだ料理のレパートリーが多彩な横島といえども、やはり日々の献立は悩むらしい。
基本的には店の余った食材プラスアルファで夕食を作ってはいることもあり、流石に毎日だと悩んでしまうようである。
「寒いからやっぱり温かい物がいいわね」
「たまには中華も良くない?」
「クラムチャウダーとかもいいなぁ」
店内は相変わらず女子中高生を中心に賑わっているが、横島の周りにはやはり美砂達が座っていてそれぞれに夕食で食べたい物を主張していた。
彼女達もまたほとんど毎日夕食を食べに来ているので、割と食べたい物を主張することが多い。
人数が増えて以来夕食にも最低限の食費を取ったことが、逆に彼女達が来やすくなったという事実もあるが。
元々一緒に夕食を食べる木乃香達はハルナを除いて割とリクエストを言わないので、美砂達のリクエストは比較的通りやすかった。
「クラムチャウダーに中華か……」
最もその日店に余ってる食材次第なので横島は現在ある食材を思い浮かべながら献立を考えるが、そこに先程那波重工に居た千鶴が発砲スチロールの箱を三つほど持参して店にやって来る。
「うわ~、それなに?」
「帆立よ。 五十枚はあるって言ってかしら。 さっきお父様達に貰ったの」
発砲スチロールの箱は中身が水産物のようで、千鶴も店の前までは車で送ってもらったらしい。
その大きな箱に美砂達のみならず横島や木乃香達も集まっていくが、明日菜が中身を尋ねると千鶴は箱を床に置き開けて見せるが中には新鮮な帆立貝が大量に入っていた。
「どうしたの? こんなに……」
「お父様が頂いた物なんだけど、食べきれないからって半分貰ったのよ」
突然大量の帆立貝を持ち込む千鶴に誰もが当然の疑問を抱くが、どうやら両親が頂いた物らしい。
木乃香同様にあやかと比べると庶民的な千鶴だが、やっぱり実家はお金持ちなんだと周りの少女達はシミジミと感じる。
「マスターなら貝付きの帆立も調理出来ると思って。 今日の夕食にみんなで頂こうかと思ったんだけど」
箱の中の帆立はまだ生きてるようで貝が動く物もあり、なかなかお目にかかれない生きた帆立に少女達とタマモは興味津々な様子だった。
特に生きた帆立を初めて見たタマモは、指でつんつんと突いてみたりしており楽しげである。
「調理は出来るけど、いいのか? 買えば結構高いぞ」
「いいのよ。 いつも安くご馳走になってるもの」
千鶴の差し入れで今晩のご飯が決まったと美砂達なんかは喜ぶが、流石に横島は安くはない物なので一応確認はしてみる。
まあここまで持って来た物をやっぱり止めたと言うとは横島も思ってないが。
「そっか。 そんじゃ有り難く使わせてもらうよ」
いつもの如く柔らかい笑顔で使って下さいと言う千鶴に横島は素直に受け取り厨房に運ぶが、千鶴はそんな横島を何処か嬉しそうに見つめていた。
ついさっき横島との関係を考えさせられる話が祖母からあっただけに、千鶴は少しだけ不安な気持ちが胸に残っている。
帆立を貰ったのは偶然だろうが、そのまま店に来て横島の顔を見た千鶴は素直にホッとしていた。