平和な日常~冬~2

「話とは横島君のことじゃ、具体的な話はまだしとらんが協力してくれることになった。 すまんが横島君と話し合って木乃香の警護を再検討してくれんか?」

一方この日の放課後には刀子が近右衛門に呼ばれていた。

用件は木乃香の警護に関してであり、横島の協力がある以上は現在続けている横島の店に滞在中の警護を減らすことも含めて検討することにしたようだ。


「はい、それは構いませんが……」

「彼の性格を考えれば分かるじゃろうが、協力は約束してくれたが細かい話は任せると言うことでほとんどしとらん。 横島君とよく話し合ってくれ。 問題は彼の店から木乃香が帰るときじゃが、彼が不要だと言うならそれでもいい」

横島の協力と聞き刀子は思わず複雑そうな表情を隠せなかったが、近右衛門は具体的な話はほとんどしてないと言い切る。

実際横島は近右衛門と土偶羅に問題を丸投げしているし、近右衛門と土偶羅は情報関連の問題で数日忙しかった。

ただここ数日の調査で横島側の情報の信憑性は明らかになりつつあるので、改めて木乃香の警護を考え直す必要が出てきている。

加えてフェイトの一件以来関東魔法協会では木乃香以外の要人警護に関しても警戒レベルを上げていたが、この一件に関しても土偶羅とは事前交渉が終わっており全体として通常レベルまで戻すことになっている。

フェイトを含む命に関わるような危機は現状でも土偶羅が密かに警戒しているので、関東魔法協会では通常の諜報対策を主とした警戒レベルまで戻しても問題は無かった。

それに地球側各国の魔法協会を見ても一時期に警戒レベルを上げた魔法協会はあっても、現状では通常レベルに戻している魔法協会がほとんどである。

安全性が確保される以上はあまり過剰な警戒体制は、逆に秘密があると思われる原因にもなりかねない。

元々魔法協会としても現状の警戒レベルを常時維持するのは些かキツイとの本音もない訳ではないが。


「わかりました。 それでは横島君は魔法協会に加わるのですね?」

「……そこはまだ決めかねておる。 実はいろいろ状況が変わってのう。 詳しくは彼に聞いてみるといい」

横島が正式に魔法協会に協力することになったと聞いた刀子は当然ながら魔法協会に所属するのだと思ったようだが、近右衛門はその件になると困ったような表情に変わる。

横島を魔法協会に加えるかは本人と話し合ってないし、第一木乃香に近すぎる横島を関東魔法協会に所属させると東西の後継者問題に影響を与える可能性があった。

近右衛門や横島にその気がなくとも、周りがそう見て横島が裏で過剰な注目を集めるのはいいことではない。

ただでさえ超極秘情報の提供元を隠すのに大変なのに、時期を同じくして横島が目立つのは避けたかった。

実は近右衛門は今後は横島との繋ぎ役を刀子に頼もうかと考えている。

まあ近右衛門自身も以前から店には行くので自分で話すことも出来るが、立場上信頼出来る繋ぎ役が欲しいのが実情だった。

横島と近右衛門の双方が気心を知れていて、超極秘情報に関わる可能性があるほど信頼度が高い人物となると他に居るはずがない。

なお横島の現状をどこまで刀子に話すかも近右衛門は悩んでいたので、そちらは完全に横島に丸投げし返している。


(高畑君よりは葛葉君の方がよかろうて)

土偶羅の活躍により横島が麻帆良にとって重要な人物となっているが、横島も男であり繋ぎ役には横島に好意を持つ女性の刀子が最適だった。

他に高畑も繋ぎ役の候補として考えてみたが、下手な正義感を持たない刀子の方が横島に合いそうなのも理由の一つにある。

とりあえず木乃香の警護の件を刀子と横島に相談してもらい様子を見ようと近右衛門は考えていた。



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