「みんなも休憩しないか？　今日は客が少ないからマンゴーが余ってるんだわ」

愛衣が美味しそうにフルーツパフェを食べてるのに満足した横島は、ついでと言わんばかりにのどか達や木乃香達に冷やしたマンゴーを出す

しかしそれは高級完熟マンゴーであり、仮に市場で売れば万単位の値段がつく事は秘密だった


「甘くて美味しいわ～」

木乃香や明日菜達はいつもありがとうと素直に食べるのだが、夕映は若干首を傾げている


（ここで食べるフルーツは何故これほど美味しいのでしょうか？　何か美味しく完熟させる秘訣でもあるんでしょうか？）

店でご馳走してもらうフルーツの味に夕映は何か秘密でもあるのかと考えるが、ただ単純に高級フルーツが多い事実はまだ気付かないらしい

木乃香は元々お嬢様で高級品に慣れているし、明日菜やのどかはそこまで考えないために夕映は一人で疑問を感じていた


「どうした？　美味しくないか？」

「いえ、非常に美味しいです。　ただ余り物とは思えなくて……」

「それは今日が一番食べ頃なんだよ。　まあ明日一日くらいなら持つんだろうけど、美味しい物は美味しい時に食べるのが一番だろ？」

僅かに首を傾げる夕映に横島が気付き声をかけるが、夕映は思わず疑問を口に出してしまう

そんな夕映に横島は食べ頃が一番だからと笑ってごまかしていた

実際に食べ頃に食べるのが一番なのは確かだが、実は木乃香達へは食べる物が被らないように気を使っていた事は秘密である

木乃香や夕映がサービスで出すと心配をするので、最近は余り物だと言っていろいろ食べさせていたのだ


「テスト勉強ですか？」

デザートを食べ終わり早々に勉強を再開する明日菜とのどかに横島は再び解らないとこを教えていくが、そんな光景を愛衣は不思議そうに見つめていた

喫茶店で勉強する事自体は珍しくはいあが、店主が教えてる光景は珍しい


「横島さん、ああ見えて頭がええんよ」

「それに私達は店を開店する前から知り合いですしね。　いつもよくしてもらってます」

横島と木乃香達の関係を見ていた愛衣は普通の客と店主には見えないと感じていたが、実際木乃香と夕映も客と店主の関係でない事を自覚していた

横島は余り物やサービスだと言ってはタダでスイーツなどを出す事が多く、木乃香達はその分忙しい時間なんかは少し手伝ったりもしている

一応バイトとして働いてるのは木乃香だけなのだが、木乃香が居ない時に忙しかったりすると明日菜や夕映もフロアで手伝う機会が何度かあったのだ


「そうなんですか～　凄いですね」

そのまま木乃香と夕映が褒めるために愛衣が横島を勘違いしていく姿に、横島は勉強を教えてながらも内心微妙な気持ちだった


（なんか最近要らんハードルが上がってる気が……　俺は適当で気楽に生きたいだけなんだが……）

自由気ままに生きてるはずの自分が、何故か最近周囲からの評価が高い事実に横島は複雑な気分である

長年あまり評価される事がなかった人生なだけに、戸惑いを感じずにはいられなかったのかもしれない