平和な日常~冬~2

その後なんとか手合わせを自重した鶴子達が帰ると横島は店を閉めるが、入れ代わるように土偶羅が現れる。

話の内容は主に近右衛門との会談の結果報告であった。


「一度くらいは顔出さなきゃダメだよなぁ。 自分で言うのも何なんだが、俺達って怪し過ぎるし」

土偶羅からは近右衛門に雪広家と那波家との会合に出て欲しいと頼まれた件を伝えられた横島は、少し苦笑いを浮かべて仕方ないよなとつぶやく。

客観的に見て横島と土偶羅が怪しいなんて生易しいものでないのは横島が一番理解している。

一度しっかり話をする必要はあるんだろうとは思うようだ。


「それと超鈴音はどうするつもりだ?」

そして土偶羅がもう一つ横島に確認しなければならなかったのは、超鈴音関連の情報の扱いであった。

単純に考えて彼女の存在は麻帆良にとって危険なものである。

超鈴音が進めている計画はすでに土偶羅が概ね調べ尽くしているが、彼女の計画は根本的に麻帆良や地球にとってはマイナスでしかない。

加えて彼女の計画では彼女が本来救いたい未来は変わらずに、新たな似て非なる未来を作り出すだけだという厳しい現実がある。


「どうするって言われてもな。 まあ放置も出来ないか」

ここまで横島と土偶羅は近右衛門達に何の遠慮もなくカードを切って来たが、麻帆良やこの世界に関する全ての情報を渡すには魔法協会の情報を覗ける超鈴音をどうにかしないと厄介になるだろう。

それに超鈴音自身が麻帆良にとってはテロリストに近いので今更そこだけ隠すことも出来ない。


「なんとかして味方に引き込めないか? そもそもあいつは自分の未来世界を救いたいんだろ」

横島にとって超鈴音の情報を素直に近右衛門達に渡すことは決して悪い選択肢ではないが、麻帆良祭以降は超に協力して貰った経緯がある。

ぶっちゃけ平行未来なんかに関わっても横島には一切いいことはないが、いろいろと細かい借りがある相手に対し危険だからと敵対出来るほど横島は物事をシビアに考えることが出来ない。


「また厄介事が増えるな」

「仕方ないだろうが。 今まで協力して来たし友達なんだから」

「それが人の生き方ということか」

土偶羅の問い掛けに横島は単純に超鈴音を味方に引き込めないかと考え、土偶羅はそれを不可能だとは言わなかった。

ただまた厄介事が増えるなと、ため息はこぼしていたが。

しかし現実的に超鈴音との利害調整と言うか、目的の調整は可能だろうと土偶羅は以前から考えてはいた。

ただしそれには時間移動が歴史や世界に与える影響などの情報開示が必要だし、場合によっては彼女の未来を救う手助けも必要になるかもしれないが。

まあ現状では細かな結論を急ぐ必要はないが、近右衛門達に超の情報を渡す前に横島の方針だけは決めておく必要がある。

結局は横島が超に対してどこか共感めいたモノを感じていることが全てなのかもしれない。

そして横島と協力して来たことが超鈴音の過酷な運命にも影響を及ぼすことになる。



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