平和な日常~春~

「まさかここのお店の人だとは思いませんでした。 寮の近くにいろんな物出す美味しい喫茶店があるって噂は聞いていたんですけど……」

店内をキョロキョロ見渡す愛衣だったが、元洋食レストランのままの店内は喫茶店にしては高級感があった

表の店構えもそうなのだが高級感がありいい味わいの店なのだが、その分よく知らない中学生には入りにくい雰囲気もあるようだ


「その日の気分で作ってる物もあるからなー」

一応普通のメニューもあるしそこそこ売れてるが、やはり一番の売上は日替わり限定メニューなのである

客の半数は日替わり限定メニューを求める客なため、売上もイマイチ上がってない


「甘い物は好きか? 奢るから何でも食べたいやつを選んでくれ」

「えっと……、それじゃフルーツパフェをお願いします」

お礼に来たはずなのに何故か奢られる話になってることに愛衣は戸惑い気味だが、流されるままメニューから食べたいスイーツを選ぶ

横島がそのまま厨房に行く姿を見ていた愛衣は、何故か申し訳ない気持ちを感じてしまう


「あの……、いつもあんな感じなんですか?」

「そうやね。 横島さんはいつもあんな感じなんよ。 よくサービスしてるんや。 あっ、ウチは近衛木乃香や。 よろしゅう」

初来店の喫茶店でサービスされるのは珍しいと感じた愛衣が先日顔を合わせた木乃香に尋ねるが、その答えに驚きポカーンとしている


「近衛って……まさか、学園長先生のお孫さんですか?」

「そうや、ウチのおじいちゃんやよ。 おじいちゃん知っとるん?」

「いえ、珍しい名前なので……」

木乃香の名前に僅かに慌てた様子の愛衣だったが、下手にボロをださないように必死だった

魔法関係者から木乃香の件は聞いた事があった愛衣だが、まさかこんな場所で会うとは思わなかったらしい



「美味しい……、でもなんか値段と中身が釣り合ってないような……」

そのまま木乃香と世間話をしていた愛衣にフルーツパフェが出されるが、それはなんと言うか本格的な物だった

何よりフルーツが新鮮で美味しいのだ

喫茶店などでよくある缶詰のフルーツではなく、生のフルーツをその日に調理してるため本当にみずみずしくて美味しいのである

愛衣は思わずメニューを見て値段を確認したほど、それは意外性のスイーツだった


「ここのスイーツを食べたら、他で食べるのが馬鹿馬鹿しくなるですよ。 お客さんの中にはスイーツお持ち帰りする為に買いに来る人も居ますからね」

フルーツパフェに驚きながらもパクパクと食べていく愛衣に、夕映は多少苦笑いを浮かべて事情を教えている

横島の店で日替わり限定メニューの次に売れてるのがスイーツなのだ

しかもこちらは持ち帰りの客も多い

特別宣伝してる訳でもないし持ち帰りなどメニューには書いてないのだが、いつの間にか一部の常連がお持ち帰りをしていたのだ

ちなみに持ち帰りで一番買っていくのが、他ならぬエヴァなのは夕映でさえも知らない事実である
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