平和な日常~春~

さて場所は店に戻って、麻帆良祭の営業について話しをしていた横島達だったが今日はひとまず終わっていた

結論を焦る必要はないし、飲食店のイベントに関しては別途調べる必要があったのだ


「えっ……、夕映ちゃんも成績やばいの?」

「勉強嫌いなんです」

麻帆良祭の話題が一段落した頃に話はテストの話題になるが、夕映も明日菜と同じくテストが苦手と聞き横島は驚いていた


「夕映ってばやれば出来るのに、勉強嫌いなんや」

「私とは根本的に違うのよね。 私も勉強は嫌いだけど、私はそこそこ努力してるのに……」

勉強を嫌いだからやらないと言い切る夕映に、木乃香は苦笑いを浮かべるが明日菜は少し羨ましそうだ

テストの結果次第で補習などもあるらしいが、やれば出来る夕映は補習になれば結構簡単に点数を稼ぐらしい


「うむ、俺も勉強って嫌いだったしな~ 気持ちはよくわかるわ」

「目的もなく決められた勉強を覚えていくのは苦痛です」

何故か勉強嫌いで意気投合をする二人だったが、夕映はともかく横島は周囲に頭がいいと勘違いされてるため説得力がイマイチだった

「あの……、ここなんですけど」

そんな中で英語の教科書とノートを片手に、横島に勉強の質問をしたのはのどかである

本来は担任であり英語が担当教科の高畑に聞くべきなのだが、のどかが男性が苦手なことに加えて高畑が忙しい為になかなか聞くタイミングがなかったのだ


「ああ、ここはさ……」

のどかの質問に横島が丁寧に答えていくと、横島そのままのどかのテスト勉強の解らない部分を横島が教えていくことになる

基本的に引っ込み思案なのどかはなかなか先生に聞けないようだった


「のどかちゃんは物覚えいいなー」

木乃香達四人の中で意外にも一番勉強に積極的なのはのどかである

しかも物覚えもよく、ちょっとコツを教えれば理解するだけに横島は楽だった


「私もちょっとお願いしようかしら」

勉強するのどかの姿に何か危機感を感じたのか明日菜も勉強を教わり始めるが、彼女の場合は英語以外を教わることになる

高畑が担当の英語は補習も嫌じゃないから後回しにするらしい

結局横島は明日菜とのどかに勉強を教えていくが、木乃香と夕映はあまりやる気がないらしく本を読んだりしてくつろいでいた



「この前はありがとうございました」

そんな静かな店内にやって来たのは、先日ゲームセンターで会った佐倉愛衣だった

学校帰りらしく制服姿だったが、律儀にあの時のお礼に来たらしい


「ああ、この前の愛衣ちゃん。 本当に来てくれたんだな~ サービスするからゆっくりしてってよ」

「あの、これこの前のお礼です」

少し遠慮がちに店に入って来た愛衣を横島はいつものように迎えるが、愛衣は手作りらしきクッキーを手渡す


「美味そうだな~ そんなに気を使わんでもよかったんだが。 わざわざありがとうな」

あまり女の子からプレゼントを貰った経験がない横島が、あからさまに喜びの表情を見せると愛衣は恥ずかしそうにしつつも嬉しそうだった
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