平和な日常~冬~
その後近右衛門も穂乃香も高畑もそれぞれに意見を出し合うが、最終的な決め手が欠けたままなのは変わらなかった。
結局高畑が少し考える時間が欲しいと告げるとこの日はお開きになる。
フェイト・アーウェルンクスの狙いが確実に明日菜なのは高畑も理解してるが、だからと言って明日菜を再び魔法の世界に引きずり込むきっかけになりそうなこの一件は即決出来る話ではない。
穂乃香も今回は年末まで約半月は麻帆良に滞在予定であり、腰を据えてこの一件にケリを付けるつもりである。
これに関しては以前の環境ならば半月は少し長すぎる滞在だと思われただろうが、幸か不幸かフェイトの一件で関西では関東との交流に積極的でもある。
実際に自分達が狙われた関西は、本当は自分達が狙われると知らない関東よりも危機感が高い。
穂乃香の人脈を使ってでも対フェイトの東西の連携は必要不可欠だと関西の幹部達は考えていた。
まあ関西としては二十年前のトラウマから、今度は何処が攻めてくるのかと戦々恐々としてる面もある。
フェイト単独も厄介だが、それ以外ではまた連中が暗躍でもして戦争に巻き込まれるのではと考えてもいる。
そしてそれを阻止するには情報収集や資金力や政治力で勝る関東の力は必要不可欠だと見ていた。
一方の関東では二十年前にメガロ系の精鋭魔法使いを退けた関西の戦力を是非とも味方に付けたかった。
それに関東の人間の大半は、いい加減狭い国の中の対立を終わらせたい者が多い。
メガロを敵に回して関西も敵に回すような状況は必ずしも望んでなく、少なくとも同じ国の中の魔法協会の対立をバカバカしいと感じてる者は多い。
結果的に穂乃香の麻帆良での長期滞在は東西双方の利害が一致する行動でもあった。
「刀子、アンタはまた難儀な恋愛をしてはるな」
近衛邸での話し合いが終わると刀子は自宅に帰ろうとしたが、鶴子に誘われるままに今日は泊まることになり二人だけでお酒を飲み始める。
久しぶりにゆっくり飲もうと鶴子が誘ったのだが、開口一番鶴子は刀子を慌てさせる一言を口にした。
「彼はそんなんじゃありませんよ!」
「私は相手を特定したつもりはないんやけど」
厄介な恋愛と言われて慌てた刀子は即座に一人の男性を思い浮かべて否定するが、それはどう見ても薮蛇でしかない。
「うぅ……」
昔から頭が上がらない鶴子を相手にアッサリと全てを見抜かれたと悟った刀子は顔を赤らめて抗議の視線を向けるが、鶴子はニコニコと笑っていて堪える様子はない。
「アンタは昔から不器用というか要領が悪いもんな。 東の男の次はお嬢様と同じ男なんて困ったもんや。 しかもあの男ただ者やないわ」
刀子自身は昔も今も自分を神鳴流の末端の一介の剣士でしかないと思っているが、実のところ鶴子や青山家の人間はかなり刀子に期待をしている。
少し柔軟性に欠ける部分はあるがその実力は折り紙付きであり真っ直ぐな性格も評価が高く、かつて近衛家の一人娘である木乃香が麻帆良に来る際に護衛としてにわざわざ派遣したのはそれだけ期待されていたからであった。
一皮剥ければ化けるかもしれないと評される刀子の実力は、鶴子や詠春が信頼するだけの力はある。
ただその真っ直ぐな性格が悪い方に働くことも多く、要領が悪いとも見られていた。
特に東西の関係が一番難しい時期にわざわざ関東の人間と結婚してみたり、今回は主家の娘である木乃香と同じ相手に惚れたのだから鶴子は少し呆れていた。
「ちょっと変わった人ですけど、いい人ですよ。 お嬢様のことも暖かく見守ってますし」
一方すっかり鶴子に話の主導権を握られた刀子だが、鶴子が横島をただ者じゃないと呟くと少し心配そうな表情になり説明を始める。
刀子としてはやはり横島が誤解されたのかと少々焦ったらしい。
結局高畑が少し考える時間が欲しいと告げるとこの日はお開きになる。
フェイト・アーウェルンクスの狙いが確実に明日菜なのは高畑も理解してるが、だからと言って明日菜を再び魔法の世界に引きずり込むきっかけになりそうなこの一件は即決出来る話ではない。
穂乃香も今回は年末まで約半月は麻帆良に滞在予定であり、腰を据えてこの一件にケリを付けるつもりである。
これに関しては以前の環境ならば半月は少し長すぎる滞在だと思われただろうが、幸か不幸かフェイトの一件で関西では関東との交流に積極的でもある。
実際に自分達が狙われた関西は、本当は自分達が狙われると知らない関東よりも危機感が高い。
穂乃香の人脈を使ってでも対フェイトの東西の連携は必要不可欠だと関西の幹部達は考えていた。
まあ関西としては二十年前のトラウマから、今度は何処が攻めてくるのかと戦々恐々としてる面もある。
フェイト単独も厄介だが、それ以外ではまた連中が暗躍でもして戦争に巻き込まれるのではと考えてもいる。
そしてそれを阻止するには情報収集や資金力や政治力で勝る関東の力は必要不可欠だと見ていた。
一方の関東では二十年前にメガロ系の精鋭魔法使いを退けた関西の戦力を是非とも味方に付けたかった。
それに関東の人間の大半は、いい加減狭い国の中の対立を終わらせたい者が多い。
メガロを敵に回して関西も敵に回すような状況は必ずしも望んでなく、少なくとも同じ国の中の魔法協会の対立をバカバカしいと感じてる者は多い。
結果的に穂乃香の麻帆良での長期滞在は東西双方の利害が一致する行動でもあった。
「刀子、アンタはまた難儀な恋愛をしてはるな」
近衛邸での話し合いが終わると刀子は自宅に帰ろうとしたが、鶴子に誘われるままに今日は泊まることになり二人だけでお酒を飲み始める。
久しぶりにゆっくり飲もうと鶴子が誘ったのだが、開口一番鶴子は刀子を慌てさせる一言を口にした。
「彼はそんなんじゃありませんよ!」
「私は相手を特定したつもりはないんやけど」
厄介な恋愛と言われて慌てた刀子は即座に一人の男性を思い浮かべて否定するが、それはどう見ても薮蛇でしかない。
「うぅ……」
昔から頭が上がらない鶴子を相手にアッサリと全てを見抜かれたと悟った刀子は顔を赤らめて抗議の視線を向けるが、鶴子はニコニコと笑っていて堪える様子はない。
「アンタは昔から不器用というか要領が悪いもんな。 東の男の次はお嬢様と同じ男なんて困ったもんや。 しかもあの男ただ者やないわ」
刀子自身は昔も今も自分を神鳴流の末端の一介の剣士でしかないと思っているが、実のところ鶴子や青山家の人間はかなり刀子に期待をしている。
少し柔軟性に欠ける部分はあるがその実力は折り紙付きであり真っ直ぐな性格も評価が高く、かつて近衛家の一人娘である木乃香が麻帆良に来る際に護衛としてにわざわざ派遣したのはそれだけ期待されていたからであった。
一皮剥ければ化けるかもしれないと評される刀子の実力は、鶴子や詠春が信頼するだけの力はある。
ただその真っ直ぐな性格が悪い方に働くことも多く、要領が悪いとも見られていた。
特に東西の関係が一番難しい時期にわざわざ関東の人間と結婚してみたり、今回は主家の娘である木乃香と同じ相手に惚れたのだから鶴子は少し呆れていた。
「ちょっと変わった人ですけど、いい人ですよ。 お嬢様のことも暖かく見守ってますし」
一方すっかり鶴子に話の主導権を握られた刀子だが、鶴子が横島をただ者じゃないと呟くと少し心配そうな表情になり説明を始める。
刀子としてはやはり横島が誤解されたのかと少々焦ったらしい。