夕方になり学生達が集まり出すと店の雰囲気はガラリと変わる。

この日は穂乃香と鶴子が居るので常連の学生達の興味は自然と二人に集中していた。

学園長の娘ということで興味が沸くのだろうが、残念ながら見た目に関しては似ておらず学園長の亡くなった奥さんが美人だったのだろうと噂する。

木乃香は自分が母と従姉妹と注目されることに若干の気恥ずかしさはあるようだったが、今まで散々横島との関係を注目されてからかわれたりした影響からか表情に現れるほどではない。

前回の詠春の時もそうだったが、人目を集めるのにはいい加減慣れたらしい。


「アスナちゃんもあやかちゃんも千鶴ちゃんも久しぶりね」

一方穂乃香は昔から顔見知りである、明日菜・あやか・千鶴と話をしていた。

初等部から同じクラスだった明日菜とあやかは元より、両親と友人だった千鶴も幼い頃から知っているようだ。

尤も千鶴は初等部の時は木乃香達とクラスが違ったので、パーティーなどで会うあやか以外の明日菜と木乃香とは顔見知り程度の仲だったが。


「お久しぶりです、穂乃香さん」

「父と母が一度食事でも一緒にと申しておりましたわ」

明日菜もあやかも千鶴も久しぶりの穂乃香との再会を素直に喜んでいて、あまり年齢差を感じないように親しげに会話をしていく

特に明日菜とあやかは幼い頃は一緒になって遊んだだけに、懐かしさが込み上げてきてるようである。


「みんな会うたびに大人になっていくわね」

前回穂乃香が来てから約十ヶ月ほどしか過ぎてないが、穂乃香は会うたびに大人になる木乃香や明日菜達を嬉しそうに見つめていた。

一緒に遊んだ頃がつい最近のように思い出される穂乃香にとって、少女達の成長はあまりに早いと思ってしまう。


「それにしても、面白い人を見つけたわね」

まだまだ子供だとばかり思っていた少女達が、いつの間にか大人への階段を上り始めていた事実は嬉しくもあり寂しくもあった。

店内を見渡せば先程まで穂乃香の膝の上に居たタマモがお手伝いをするからと常連の少女達の注文聞きをしているし、木乃香はいつもと同じく厨房とカウンターの裏を行き来して料理やデザートを作っている。

肝心の横島は常連の女子高生達に引っ張られて行き、何やらひそひそと話しては横島が否定するといった具合に端から見ると遊んでいるように見える。

ちなみに女子高生達が横島にひそひそと話していたのは、木乃香との関係を母親に話したのかとか、いよいよ婚約かとかをからかい半分でいろいろ聞かれているだけだったが。

それは一見すると昔からある古きよき麻帆良の賑やかな光景と大差ないモノではあったが、同時に魔法使いも一般人もそして妖怪や幽霊まで一緒な姿は決して昔からあった訳ではない。


「横島さんと会うとみんな似たようなことを言うんですよね」

「確かに面白い人ではありますけど」

「近すぎると見えないモノもあるのよ。　木乃香や貴女達は運がいいのかも知れないわね」

嬉しそうというか楽しそうに店内を見ていた穂乃香は横島を面白い人と表現するが、横島と会う人は割と同じ表現をすることが多い。

それ故に明日菜達は面白い人ではありますけど笑ってしまうが、穂乃香は少し意味深な言葉を明日菜達に返すことになる。