平和な日常~冬~
「それとすまぬが一つ頼まれてくれんか? エヴァの解放の目処が着いたが、高位魔法使いがワシの他にあと二人必要なんじゃ」
木乃香の件はとりあえずは近右衛門から高畑に相談することと穂乃香が横島に会ってから再度相談することにしたが、近右衛門は続けてエヴァの件を穂乃香に説明し始める。
「もちろん、いいですよ」
魔王との異名を持つエヴァの解放だが、穂乃香は迷うことなく協力を即決した。
麻帆良で育った故に穂乃香はエヴァの噂を知っているが、実のところエヴァの伝説の大半は抽象的な噂でしかない。
そんな噂を流したのはもちろんメガロメセンブリアであるが、実際にエヴァが明確に行ったのは自身を狙って来た者を返り討ちにした程度でまともな情報を流せば脅威にはならなかった。
以前にも少し説明したが結果的にメガロは有りもしない抽象的な噂を流してその脅威を強調することで、自分達は正義だと名乗り他国や彼らが旧世界と名乗る地球に魔法使いを大々的に派遣する大義名分が得られたのだ。
まあメガロメセンブリアがその歴史において悪と断罪した者の中には、エヴァに似たような事例が幾つもあるのは確かである。
無論穂乃香は近右衛門の娘なのでそんなエヴァの真実を知っているし、エヴァの存在に関しては夫である詠春が散々悩んでいたのでよく理解していた。
この世に絶対悪などないし絶対正義もない。
穂乃香からすると夫の悩みが一つ解消するかと思うと素直にホッとする。
「でも三人目はどうするんです? 私に頼む以上はあまり協会の力は使いたくないのでしょう?」
そんな穂乃香の答えに近右衛門もまたホッとするが、穂乃香は近右衛門とエヴァが自分に頼んだ意図を瞬時に見抜き三人目はどうするのかと尋ねた。
流石に詳しい事情までは理解してないようだが、近右衛門が個人的に解放に協力する形にしたいのは明らかである。
確かに穂乃香の魔法や呪術の実力は素晴らしいが、それでも関東や関西の人間で代わりの人材が全く居ない訳ではない。
まして集団での魔法ならば専門の魔法使いなり術士に頼る方が懸命に思えた。
「うむ、何人か候補は居るがなかなか……。 エヴァとしてはあまり他人に貸しは作りたくないようじゃからのう」
「彼女の立場からすると当然でしょうね」
理解が早い穂乃香のおかげで話はスムーズに進むが、近右衛門も穂乃香もエヴァの気持ちをある程度理解していた。
二人は生まれながらに人の上に立つ環境だったが、だからこそ幼い頃から人間の良さも厄介さもよく理解している。
エヴァの立場からするとメガロメセンブリアも関東魔法協会も大差ないのだろうと二人は思う。
異端な存在だと疎まれては、生きる為に得た力を時には過剰に警戒され時には利用されるようなことを繰り返して来たのだろう。
関東と関西の魔法協会も現状ではメガロという外敵のおかげで比較的まともであるが、いつどうなるかなど分かったもんじゃない。
それに魔法協会の側も近右衛門達などの一部の者以外はエヴァを完全に信用してる訳ではないので、互いに適度な距離が必要なのは明らかだった。
「本当にあの人は後先を全く考えないんだから」
「まあ後先を考えるような者は世界など救えんのかもしれんがな」
結局穂乃香と近右衛門はエヴァの解放に互いに協力することになるが、二人は同時にややこしい問題ばかり残した英雄を少し恨めしく思うことになる。
悪い人間ではないが迷惑な人間なのは確かだったし、穂乃香にとってナギは夫の友人として好感を持ってもいたが彼がやらかした問題の数々を考えると恨めしくも思うらしい。
木乃香の件はとりあえずは近右衛門から高畑に相談することと穂乃香が横島に会ってから再度相談することにしたが、近右衛門は続けてエヴァの件を穂乃香に説明し始める。
「もちろん、いいですよ」
魔王との異名を持つエヴァの解放だが、穂乃香は迷うことなく協力を即決した。
麻帆良で育った故に穂乃香はエヴァの噂を知っているが、実のところエヴァの伝説の大半は抽象的な噂でしかない。
そんな噂を流したのはもちろんメガロメセンブリアであるが、実際にエヴァが明確に行ったのは自身を狙って来た者を返り討ちにした程度でまともな情報を流せば脅威にはならなかった。
以前にも少し説明したが結果的にメガロは有りもしない抽象的な噂を流してその脅威を強調することで、自分達は正義だと名乗り他国や彼らが旧世界と名乗る地球に魔法使いを大々的に派遣する大義名分が得られたのだ。
まあメガロメセンブリアがその歴史において悪と断罪した者の中には、エヴァに似たような事例が幾つもあるのは確かである。
無論穂乃香は近右衛門の娘なのでそんなエヴァの真実を知っているし、エヴァの存在に関しては夫である詠春が散々悩んでいたのでよく理解していた。
この世に絶対悪などないし絶対正義もない。
穂乃香からすると夫の悩みが一つ解消するかと思うと素直にホッとする。
「でも三人目はどうするんです? 私に頼む以上はあまり協会の力は使いたくないのでしょう?」
そんな穂乃香の答えに近右衛門もまたホッとするが、穂乃香は近右衛門とエヴァが自分に頼んだ意図を瞬時に見抜き三人目はどうするのかと尋ねた。
流石に詳しい事情までは理解してないようだが、近右衛門が個人的に解放に協力する形にしたいのは明らかである。
確かに穂乃香の魔法や呪術の実力は素晴らしいが、それでも関東や関西の人間で代わりの人材が全く居ない訳ではない。
まして集団での魔法ならば専門の魔法使いなり術士に頼る方が懸命に思えた。
「うむ、何人か候補は居るがなかなか……。 エヴァとしてはあまり他人に貸しは作りたくないようじゃからのう」
「彼女の立場からすると当然でしょうね」
理解が早い穂乃香のおかげで話はスムーズに進むが、近右衛門も穂乃香もエヴァの気持ちをある程度理解していた。
二人は生まれながらに人の上に立つ環境だったが、だからこそ幼い頃から人間の良さも厄介さもよく理解している。
エヴァの立場からするとメガロメセンブリアも関東魔法協会も大差ないのだろうと二人は思う。
異端な存在だと疎まれては、生きる為に得た力を時には過剰に警戒され時には利用されるようなことを繰り返して来たのだろう。
関東と関西の魔法協会も現状ではメガロという外敵のおかげで比較的まともであるが、いつどうなるかなど分かったもんじゃない。
それに魔法協会の側も近右衛門達などの一部の者以外はエヴァを完全に信用してる訳ではないので、互いに適度な距離が必要なのは明らかだった。
「本当にあの人は後先を全く考えないんだから」
「まあ後先を考えるような者は世界など救えんのかもしれんがな」
結局穂乃香と近右衛門はエヴァの解放に互いに協力することになるが、二人は同時にややこしい問題ばかり残した英雄を少し恨めしく思うことになる。
悪い人間ではないが迷惑な人間なのは確かだったし、穂乃香にとってナギは夫の友人として好感を持ってもいたが彼がやらかした問題の数々を考えると恨めしくも思うらしい。