平和な日常~冬~
同じ頃、横島の店には刀子が訪れていた。
いつもと同じく夕食とお酒を頼むと横島と世間話をしながらゆっくりとした時間を過ごすが、途中から穂乃香の話題に変わる。
「私もそんなに親しい訳じゃないけど気さくな方よ」
明日か明後日には会う約束があると横島が教えると刀子は気さくな人だと言うが、あまり話したことがないようだ。
実際刀子は穂乃香が麻帆良に来た際には木乃香や近右衛門の警護の件で話す機会はあるが、個人的な話をするほどの関係ではない。
刀子が麻帆良に来る前は同じ京都に居たことは居たが、近衛家の穂乃香と神鳴流の末端の刀子では話すどころか顔を見る機会すらほとんどなかった。
詠春はまだ神鳴流の人間であるし正式な役職についているので会う機会はあったが、京都での穂乃香は詠春の妻として以上の動きはなかったので接する機会は皆無と言っていい。
「私としては一緒に来た青山先輩の方がよく知ってるんだけど」
穂乃香に関しては悪い噂は聞かないし気さくな人としか言えない刀子だが、彼女の場合は一緒に来た鶴子の方が親しいようだ。
同じ神鳴流で年が近い刀子と鶴子はよく話す機会があったらしい。
「青山って詠春さんの?」
「姪にあたるわね。 近衛さんの従姉妹よ」
ふと青山先輩と言う名前をこぼした刀子に横島が少し興味ありげに尋ねると、刀子は詠春や木乃香との関係を教えた。
一応神鳴流という名前こそ出さないが、横島が神鳴流を知ってるのは詠春が来た時の雑談で確認している。
尤も裏の世界に関わる人間で神鳴流を知らないのは、よほどのもぐりか田舎者かのどっちかだが。
「強いわよ、青山先輩は。 剣術の勝負だと詠春様よりも強いもの。 先輩を見ると才能というモノを考えさせられるわ」
酒が少し回ったのか思わず昔を懐かしむように語る刀子の話を、横島はただただ驚きながら聞いていた。
刀子とすれば青春時代の思い出話なのだろうが、詠春や刀子より確実に強いと言われると素直に驚くしかない。
まあ実際に詠春と鶴子の勝負は常に剣術の試合形式らしく、どうも女性であり姪の鶴子相手に詠春は実力を出し切れなかったとの噂もあるが剣術の腕前は明らかに上だとの評価だった。
「世の中広いんですねぇ」
結局刀子自身は鶴子には一度も勝てなかったとしみじみと語ると、横島は自分のことを棚に上げて同じくしみじみと世の中は広いなと答える。
正直横島は鶴子の件は本当に初耳であり、素直に次元が違うなと感心していたのだが。
土偶羅からは今も相変わらず報告がいろいろあるが、鶴子の存在は横島に必要な情報ではないので報告されてない。
基本的に鶴子は横島の害になる人間ではないし穂乃香の護衛以上のことはしないので、横島が知る必要がある人物ではないと土偶羅は判断したようだった。
「一応教えておくと青山先輩は美人だけど同門の旦那さんが居る人妻だから」
鶴子の話に横島はあまり興味を持った様子ではないが、刀子は最後に一応と言いつつも人妻だからと釘を刺す。
ぶっちゃけ横島に悪気はないのかもしれないが、刀子の時の初対面のように軽薄な印象を与えるのはどう考えてもマイナスだった。
加えて年下の木乃香達はともかく、流石に年上で人妻の鶴子には取られたくないとの個人的な感情もあるが。
「いや~、俺も流石に木乃香ちゃんの従姉妹はナンパしませんって」
そんな刀子の言葉に昼間に明日菜達にも注意された横島は笑って否定するが、刀子は横島のナンパ発言に少し複雑な気持ちになる。
時々ナンパ云々を言う横島だが、実際に刀子は出会った時以降そんなこと言われた記憶がない。
横島のナンパ発言は口だけだと評判ではあるが、同時に口だけでも自分は論外なのかと思うと素直に喜べなかった。
いつもと同じく夕食とお酒を頼むと横島と世間話をしながらゆっくりとした時間を過ごすが、途中から穂乃香の話題に変わる。
「私もそんなに親しい訳じゃないけど気さくな方よ」
明日か明後日には会う約束があると横島が教えると刀子は気さくな人だと言うが、あまり話したことがないようだ。
実際刀子は穂乃香が麻帆良に来た際には木乃香や近右衛門の警護の件で話す機会はあるが、個人的な話をするほどの関係ではない。
刀子が麻帆良に来る前は同じ京都に居たことは居たが、近衛家の穂乃香と神鳴流の末端の刀子では話すどころか顔を見る機会すらほとんどなかった。
詠春はまだ神鳴流の人間であるし正式な役職についているので会う機会はあったが、京都での穂乃香は詠春の妻として以上の動きはなかったので接する機会は皆無と言っていい。
「私としては一緒に来た青山先輩の方がよく知ってるんだけど」
穂乃香に関しては悪い噂は聞かないし気さくな人としか言えない刀子だが、彼女の場合は一緒に来た鶴子の方が親しいようだ。
同じ神鳴流で年が近い刀子と鶴子はよく話す機会があったらしい。
「青山って詠春さんの?」
「姪にあたるわね。 近衛さんの従姉妹よ」
ふと青山先輩と言う名前をこぼした刀子に横島が少し興味ありげに尋ねると、刀子は詠春や木乃香との関係を教えた。
一応神鳴流という名前こそ出さないが、横島が神鳴流を知ってるのは詠春が来た時の雑談で確認している。
尤も裏の世界に関わる人間で神鳴流を知らないのは、よほどのもぐりか田舎者かのどっちかだが。
「強いわよ、青山先輩は。 剣術の勝負だと詠春様よりも強いもの。 先輩を見ると才能というモノを考えさせられるわ」
酒が少し回ったのか思わず昔を懐かしむように語る刀子の話を、横島はただただ驚きながら聞いていた。
刀子とすれば青春時代の思い出話なのだろうが、詠春や刀子より確実に強いと言われると素直に驚くしかない。
まあ実際に詠春と鶴子の勝負は常に剣術の試合形式らしく、どうも女性であり姪の鶴子相手に詠春は実力を出し切れなかったとの噂もあるが剣術の腕前は明らかに上だとの評価だった。
「世の中広いんですねぇ」
結局刀子自身は鶴子には一度も勝てなかったとしみじみと語ると、横島は自分のことを棚に上げて同じくしみじみと世の中は広いなと答える。
正直横島は鶴子の件は本当に初耳であり、素直に次元が違うなと感心していたのだが。
土偶羅からは今も相変わらず報告がいろいろあるが、鶴子の存在は横島に必要な情報ではないので報告されてない。
基本的に鶴子は横島の害になる人間ではないし穂乃香の護衛以上のことはしないので、横島が知る必要がある人物ではないと土偶羅は判断したようだった。
「一応教えておくと青山先輩は美人だけど同門の旦那さんが居る人妻だから」
鶴子の話に横島はあまり興味を持った様子ではないが、刀子は最後に一応と言いつつも人妻だからと釘を刺す。
ぶっちゃけ横島に悪気はないのかもしれないが、刀子の時の初対面のように軽薄な印象を与えるのはどう考えてもマイナスだった。
加えて年下の木乃香達はともかく、流石に年上で人妻の鶴子には取られたくないとの個人的な感情もあるが。
「いや~、俺も流石に木乃香ちゃんの従姉妹はナンパしませんって」
そんな刀子の言葉に昼間に明日菜達にも注意された横島は笑って否定するが、刀子は横島のナンパ発言に少し複雑な気持ちになる。
時々ナンパ云々を言う横島だが、実際に刀子は出会った時以降そんなこと言われた記憶がない。
横島のナンパ発言は口だけだと評判ではあるが、同時に口だけでも自分は論外なのかと思うと素直に喜べなかった。