平和な日常~冬~

その頃木乃香と穂乃香は二人で夕食の支度をしていた。

今夜は家族水入らずで夕食にしようと以前から話しており、二人で御馳走を作って近右衛門を待つことになっている。

ちなみに鶴子は関してはせっかくだから妹に会う為にと、先程木乃香に顔を見せた後で東京に出掛けて行った。


「また腕を上げたわね」

その結果久しぶりに親子水入らずで料理をする木乃香と穂乃香ではあったが、夏休みから比べてまた料理の腕前を上げた木乃香を穂乃香は嬉しそうに見つめる。


「体育祭の料理大会がほんまに大変やったんよ」

日頃から電話で話はよくしていた二人だが、この日は直接体育祭の話など夏休み以降の出来事を語っていく。

特に体育祭の料理大会に関しては木乃香自身も後々の影響力や反響から時間が過ぎるに従って大変さと重大さを感じていた。


「木乃香が学園の料理大会で優勝したなんて信じられなかったわ。 私が大学生の頃から料理大会はセミプロが多くなったのよね」

木乃香の料理大会優勝は、直接応援していた詠春よりも京都に居た穂乃香の方が驚いたかもしれない。

なお穂乃香は十六年前に大学卒業と同時に京都の近衛本家の養女となり詠春と結婚したが、この時に穂乃香の義理の父となった近右衛門の兄は同時に近右衛門に近衛家の家督を暫定的に譲り、次は詠春に近衛家の家督を譲るという盟約を近衛家の親族会議で近右衛門と交わしている。

家督については少しややこしい方法を取ったが全ては東西の統合の布石であるし、同時に裏の近衛家の親戚だけでも他に男子が居ない訳ではないので詠春と穂乃香夫妻を近衛家や関西内部の権力争いから守る為でもあった。

まあ詠春の実家の青山家も関西の重鎮であるし近右衛門の亡くなった妻の実家も関西の重鎮の家柄なので主流派はほとんど味方には付けていたが、近衛本家の直系とはいえ関東に出した近右衛門に家督を継がせる件を皆が賛成した訳ではない。

特に将来的な東西の統合は当時から賛否が分かれており、関西の幹部も総論では賛成だが個別の問題はいろいろ意見がある。

ただ関西と関東を比べると関西は関東からメガロ側の勢力が去った影響で戦力面では関東を圧倒していたが、逆に組織力や資金力は圧倒されているとの事実もあった。

結局互いに次にメガロが戦争を仕掛けて来た場合は協力しなければ勝てないのは双方同じだったので、総論として東西の統合が賛成されたが当時すでに病を患っていた近右衛門の兄は近右衛門に近衛家の未来を託したのが実情だった。

少し話が逸れたが穂乃香と詠春の結婚自体は二十年前の戦後まもなく決まったが、実際に詠春は赤き翼のナギ達と共に戦後の混乱期を魔法世界で過ごしたし穂乃香は大学卒業まで麻帆良で生活している。

なので穂乃香は麻帆良が現在の体制での発足当時を良く知る一人であり、麻帆良祭の商業化や体育祭の拡大など現在の麻帆良学園の原形を作った当時の大学生のメンバーの一人でもあった。

ちなみにあやかや千鶴の両親も同じく当時大学生や大学院生だったメンバーであり、麻帆良祭を派手な商業化したのは穂乃香達などの当時の大学生達の協力が大きいとの歴史もある。

学園の支援企業や地元住民との協力体制など、現在の麻帆良学園を具体的な形に作り上げた学生側の立役者なのだ。

そんな穂乃香にとって、娘が麻帆良祭で大活躍したり体育祭で優勝したと聞くのは感慨深いものがあった。



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