平和な日常~冬~
「ただいま」
そのまま会話をしながらゆっくり歩いていた二人だが、途中寄り道をして世界樹の下まで来ていた。
穂乃香は世界樹にそっと手を触れると優しく声をかけて、麻帆良への帰還を報告する。
そんな穂乃香に反応するかのように、世界樹はほんの少しだけその秘めたる魔力が揺れた。
世界樹は言葉を交わせないが意思に近いモノがある。
普段は眠るように静かな世界樹の意思を穂乃香は感じることが出来る数少ない人間であった。
無論意思疎通まで出来る訳ではないが、語りかけると魔力の揺らぎが起きるのは世界樹の言葉なのだと穂乃香は思っている。
その後二人は予定通りにまずは近右衛門の邸宅に向かい、屋敷で働いている人達に挨拶をして最近の近右衛門の近況などを尋ねていく。
近右衛門の邸宅は以前も説明したが麻帆良学園の学園長としての公邸であり、関東魔法協会のトップとしての公邸でもある。
もちろん屋敷で働いている人達は魔法協会に所属する人達であり、炊事洗濯をするお手伝いさんから屋敷の維持管理の人員に加えて魔法使いによる警備員も配置されていた。
まあ人数的にはさほど多くはなく近右衛門の意向で最低限にされてはいるが、広い屋敷を維持管理するのは忙しい近右衛門には無理だし世の中には体裁というものがある。
それに近右衛門の警護も起きてる時はともかく夜間は厳重に行わなくてはならない。
現在は魔法協会の情勢の安定や警備が厳重なのでほとんどなくなったが、麻帆良が独立した頃は得体の知れない侵入者が来たことはよくあったのだ。
穂乃香は娘として近右衛門を支える人々に挨拶をして頭を下げて回っていた。
「やっぱり仕事をし過ぎね」
屋敷の人達への挨拶回りが終わった穂乃香は次に近右衛門のスケジュール管理をしてる魔法協会の人に会って最近の状況を確認するが、やはり多忙であり働き過ぎの現状には頭が痛くなるばかりである。
無論周りの人間も近右衛門だけを働かせてる訳ではないが、結果的に近右衛門頼りな状況は相変わらずだった。
「仕方ないとは思うけど、娘としては複雑なのよね」
話が一段落して魔法協会の人間が穂乃香達の居る部屋から退出すると、穂乃香は鶴子に思わず愚痴をこぼさずにはいられなかった。
公人としての近右衛門を考えれば仕方ない気もするが、娘としては父が命を擦り減らして働いてるようにも見えてしまう。
「雪広君達にも相談しなきゃダメね」
近右衛門の現状を穂乃香は決していいことだとは考えてなく、近右衛門の負担を軽減して行かねば大変なことになるとシミジミと感じる。
いつまでも近右衛門頼りの魔法協会では困るし、東西の統合を進める上でも近右衛門の負担軽減は必要な措置だった。
ただしそれが出来るならば、すでに誰かがやっているだろうことを穂乃香は理解している。
関東魔法協会は近代的な組織故に有能な人材も多く、学園関係者が魔法協会の運営の中枢に居るので組織運営はお手の物のはずなのだ。
「お父様の悪いところよね」
近右衛門自身にはそんなつもりはないのだろうが、後継者が育たぬ理由は近右衛門にもあると穂乃香は考えていた。
まあいずれ東西の統合をとの想いが強い故にあえて関東で明確な後継者を育てなかったのだろうと思うが、それが近右衛門を苦しめてる現状にはため息しか出なかった。
穂乃香は父や近衛家の幸せと二つの魔法協会の幸せを、なんとか両立出来ないかと苦心することになる。
そのまま会話をしながらゆっくり歩いていた二人だが、途中寄り道をして世界樹の下まで来ていた。
穂乃香は世界樹にそっと手を触れると優しく声をかけて、麻帆良への帰還を報告する。
そんな穂乃香に反応するかのように、世界樹はほんの少しだけその秘めたる魔力が揺れた。
世界樹は言葉を交わせないが意思に近いモノがある。
普段は眠るように静かな世界樹の意思を穂乃香は感じることが出来る数少ない人間であった。
無論意思疎通まで出来る訳ではないが、語りかけると魔力の揺らぎが起きるのは世界樹の言葉なのだと穂乃香は思っている。
その後二人は予定通りにまずは近右衛門の邸宅に向かい、屋敷で働いている人達に挨拶をして最近の近右衛門の近況などを尋ねていく。
近右衛門の邸宅は以前も説明したが麻帆良学園の学園長としての公邸であり、関東魔法協会のトップとしての公邸でもある。
もちろん屋敷で働いている人達は魔法協会に所属する人達であり、炊事洗濯をするお手伝いさんから屋敷の維持管理の人員に加えて魔法使いによる警備員も配置されていた。
まあ人数的にはさほど多くはなく近右衛門の意向で最低限にされてはいるが、広い屋敷を維持管理するのは忙しい近右衛門には無理だし世の中には体裁というものがある。
それに近右衛門の警護も起きてる時はともかく夜間は厳重に行わなくてはならない。
現在は魔法協会の情勢の安定や警備が厳重なのでほとんどなくなったが、麻帆良が独立した頃は得体の知れない侵入者が来たことはよくあったのだ。
穂乃香は娘として近右衛門を支える人々に挨拶をして頭を下げて回っていた。
「やっぱり仕事をし過ぎね」
屋敷の人達への挨拶回りが終わった穂乃香は次に近右衛門のスケジュール管理をしてる魔法協会の人に会って最近の状況を確認するが、やはり多忙であり働き過ぎの現状には頭が痛くなるばかりである。
無論周りの人間も近右衛門だけを働かせてる訳ではないが、結果的に近右衛門頼りな状況は相変わらずだった。
「仕方ないとは思うけど、娘としては複雑なのよね」
話が一段落して魔法協会の人間が穂乃香達の居る部屋から退出すると、穂乃香は鶴子に思わず愚痴をこぼさずにはいられなかった。
公人としての近右衛門を考えれば仕方ない気もするが、娘としては父が命を擦り減らして働いてるようにも見えてしまう。
「雪広君達にも相談しなきゃダメね」
近右衛門の現状を穂乃香は決していいことだとは考えてなく、近右衛門の負担を軽減して行かねば大変なことになるとシミジミと感じる。
いつまでも近右衛門頼りの魔法協会では困るし、東西の統合を進める上でも近右衛門の負担軽減は必要な措置だった。
ただしそれが出来るならば、すでに誰かがやっているだろうことを穂乃香は理解している。
関東魔法協会は近代的な組織故に有能な人材も多く、学園関係者が魔法協会の運営の中枢に居るので組織運営はお手の物のはずなのだ。
「お父様の悪いところよね」
近右衛門自身にはそんなつもりはないのだろうが、後継者が育たぬ理由は近右衛門にもあると穂乃香は考えていた。
まあいずれ東西の統合をとの想いが強い故にあえて関東で明確な後継者を育てなかったのだろうと思うが、それが近右衛門を苦しめてる現状にはため息しか出なかった。
穂乃香は父や近衛家の幸せと二つの魔法協会の幸せを、なんとか両立出来ないかと苦心することになる。