平和な日常~冬~

「暖かいね」

「うん、からだがぽかぽかする」

同じ頃二階のリビングではタマモとさよの二人が、つい先程異空間アジトから運ばれたばかりのこたつを体験していた。

こたつ自体は先日横島が欲しいとこぼしていた物だが購入を通販で済ませようとハニワ兵に任せた結果、彼は買わずに異空間アジトから取り寄せたらしい。


「私なんとなくですけど、使ったことがある気がします」

足元から身体の芯まで暖まるようなこたつに二人は早くも魅了されたようだったが、さよは同時に少し懐かしいような感覚に襲われる。

相変わらず生前の記憶は一切思い出せないさよだが、それでも最近は時々何かを思い出しそうになる瞬間があった。

もちろん具体的な記憶は一切思い出せないが、懐かしいような感情が沸き上がってくることがある。

横島やタマモと一緒に居るようになってもうすぐ半年になるが、やはりその影響は確実にさよに表れていた。

尤も本来の性格らしいドジなところは相変わらずではあるが。

まあタマモのように過去を思い出したいと思わなければ思い出すことはないのだろうが、さよの場合は過去を思い出したいと願っているので少しずつではあるが魂に眠る記憶が刺激されてるようだった。


「さよちゃん、みかんたべる?」

「剥いてくれるの? もちろん食べる!」

何処か懐かしい感覚に少し心を揺さぶられるさよは、目の前で真剣にみかんの皮を剥くタマモ越しに部屋の中を見ていた。

古い洋風建築である赴きのある部屋に一見すると不釣り合いにも思えるこたつだが、意外と違和感がないなとさよは思う。

部屋には夏祭りで取った金魚が元気に泳いでいる水槽もあるし、三人で選んだじゅうたんやカーテンなんかに加えて茶々丸から貰った応接セットもある。

横島もさよもそれほどインテリアを考えた訳ではないが、この空間がさよは何より好きだったし自分の家なんだなと改めて思うと本当に幸せな気分になった。


「そういえばタマモちゃん、サンタさんにお願いするクリスマスプレゼント決めた?」

「わたしがさんたさんにぷれぜんとするの!」

タマモが剥いてくれたみかんを笑顔で食べるさよだが、ふとクリスマスのプレゼントの話をタマモに尋ねてみる。

流石にサンタクロースが居るとは思ってないさよは、子供のクリスマスプレゼントは家族があげる物だと考えているのでそれとなく聞き出そうとするが、やはりタマモはプレゼントをあげるんだと元気な声で言い切った。


「わたしはみんなといっしょならそれでいいんだ」

少し前からタマモにクリスマスの話をする人は横島達のみならず店の常連でも多いが、タマモは相変わらずサンタさんにプレゼントをあげるんだと張り切っている。

欲しいおもちゃとかないのと尋ねる人も居るが、タマモはみんなと一緒がいいと言い張り特に欲しい物はないらしい。

実のところタマモはプレゼントやお土産を貰い慣れてるせいか欲しい物自体があまりなく、それよりも横島やさよや木乃香達と同じがいいと望んでいた。

もし仮にサンタクロースがみんなにプレゼントをあげるならばタマモも喜んで貰うのだろうが、タマモ的には自分だけ貰うのはあまり好きではないらしい。

結局さよはタマモのプレゼントどうしようとしばらく悩むことになる。



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