平和な日常~冬~

中高生の少女達が店に来るとこの日は本当に賑やかになっていた。

前日まではまだ勉強してる人も居たが、流石に今日ばかりは明日菜やのどかを含めて勉強をしてる者は誰も居ない。


「マスター、クリスマスの予定は?」

「予定も何も店があるだろうが」

テストが終わったせいか少女達は早くもクリスマスと冬休みに気持ちが傾いており、それぞれがクリスマスや冬休みの話で盛り上がる。

横島は美砂達を筆頭に何人かの常連にクリスマスの予定を聞かれるが、今のところ普通に仕事の予定であった。


「店でクリスマスにイベントとかやらないの?」

「やってもいいけど納涼祭の二の舞にはしたくないしなぁ」

予定を聞いた者の内訳は店で何か面白いイベントをやるのではと期待してる者と横島に好意を寄せる者に分かれているが、前者はともかく後者のほとんどはタマモの存在もあり流石に横島を誘うまでは行ってない。

タマモはいい子だし好きだとみんな言うが、いざ横島と本格的に付き合うならばと考えた場合は積極的になれない原因にもなっている。

実際問題若い少女達がこぶ付きの男と付き合うのは、些か抵抗があるのは確かだろう。

まあそこを全く気にしない美砂や桜子のような少女や女性も居ない訳ではなかったが。

加えて木乃香か千鶴のどちらかが彼女だと考える常連も結構多い。

二人ともお嬢様なので、親には言えずに隠れて付き合ってるのではと疑ってる人が予想外に多かったのだ。

そんな様々な要因の結果、横島を一番積極的に誘うのは美砂達だというのが最近の状況だった。


「ねえせっかくだから、クリスマスにみんなでパジャマパーティーとかしようよ」

「いいですけど何処でやるんです? 寮は横島さんがダメですし横島さんの家は寝具が足りませんし。 流石に雑魚寝の季節ではないですよ」

横島が常連の女子高生達にクリスマスの件で絡まれてる頃、美砂達は夕映と明日菜とさよを捕まえてクリスマスの計画を立てていた。

せっかくだからクリスマスもみんなで騒ぎたいと考えてる美砂達だが、横島と交渉するより夕映達と交渉した方が早いことを彼女達は理解している。

ぶっちゃけ横島はタマモさえ説得出来れば嫌とは言わないし、後は夕映達が止めなければ問題なく騒げるはずなのだ。


「横島さんちでいいんじゃない? 暖房で部屋を暖かくすれば大丈夫だって」

「そうだよ。 大丈夫、大丈夫」

日頃店でパーティーはよくやっている一同だったが、たまには部屋で完全に寛いでパーティーをしたいと思ってるらしい。

円は流石に十二月の雑魚寝に少々迷ってるようだが、美砂と桜子は全く気にしてないようだった。


「どうしましょうか?」

「別にパジャマパーティーにしなくても、二階でパーティーするだけでいいんじゃない? 店でやるといつの間にか人が増えて横島さんと木乃香があんまり休めないもの」

一日くらい雑魚寝で大丈夫と楽天的な美砂と桜子に夕映は明日菜とさよに意見を聞くが、明日菜はわざわざパジャマパーティーにする意味を理解出来ないらしく普通の家庭のクリスマスパーティーでいいのではと告げる。

突発的なパーティーは最近もよく店でやっているが、偶然居合わせた常連の人達が混じったりと人数が多くなりして横島や木乃香がなかなか休めない状況が続いていた。

さよは楽しければいいくらいにしか考えてないが、夕映や明日菜からすると身内だけのパーティーにするなら二階の横島の自宅でするのは賛成らしい。

まあ横島や木乃香のみならず夕映や明日菜も店でのパーティーは飲み物を作ったり皿を片付けたりと忙しいので、やるならみんながゆっくり出来る環境がいいと言うのが本音なのだろう。

最終的に彼女達はタマモを巻き込んで、一緒に普通の家庭的なクリスマスパーティーをしようと企むことになる。



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