一方この日の横島の店では、日替わりメニューとしてピザを販売していた。

テストが完全に終わり今日はみんな騒ぐんだろうなと考え、それに合うようなメニューをと考えたらしい。


「どうだ？」

時間的にちょうどお昼なので学生以外の客もそこそこ入っており、横島は店内と厨房を行ったり来たりしながら仕事をしている。

そんな中タマモは横島特製照り焼きチキンピザを美味しそうに頬張っていた。

それは照り焼きソースが香ばしく焼ける匂いが印象的な一品だったが、マヨネーズやチーズとのバランスもきちんと考えた一品でもある。


「おいしい！」

横島は口元に少しだけついているソースを拭いてあげながらタマモに感想を聞くが、言葉以上に表情で物語っており本当に美味しそうに食べていた。

実際そんなタマモにつられて同じ物を頼む客は多く、明らかにタマモが食べてると売れ筋のメニューが変わっている。


「照り焼きは日本の味だしな」

この日用意したピザはマルゲリータ・マリナーラなどの本場イタリアのピッツァ数種類に加えて、照り焼きチキンや味噌をベースにしたソースの和風ピザなども作っていた。

売れ行きとしては半々であったが、タマモの影響もあってか思った以上に照り焼きや和風ピザが売れている。

もちろん本場の味に近いマルゲリータなんかも人気ではあるが、やはり日本人には日本の味が合うのかもしれないと横島は思う。

横島自身が料理を始めて八ヶ月ほど過ぎたが、当初と現在では変わってることもある。

当初は記憶や経験にある料理や本で見たメニューなどをそのまま作っていたが、現在は横島自身の感性でアレンジというか一工夫していた。

まあさほど大きく変えてる訳ではないし基本的には継承した技術や知識を元にアレンジしただけではあるが、以前のような基本的なレシピをそのまま作っていた時よりは明らかに変化している。

何より日本人には日本人の味覚に合う料理があると横島が理解したことも大きいだろう。

元々料理に関して言えばお客を百パーセント満足させることは不可能に近く、味や見た目には好みで好き嫌いがある。

日本人には馴染みがない本場の料理も時々作るが、基本的には日本人に親しまれやすい味や料理を最近横島は好んでいた。

結局横島の根本は日本人ということなのだろう。


「おかわり！」

そして美味しそうというか幸せそうにピザを頬張っていたタマモはといえば、まだ幼いタマモ用にと一回り小さなピザを作ったのだがもっと食べたいとお代わりを要求する。


「おっ、いい食欲だな。　でももう一枚食えるか？」

瞳を輝かせるようにお代わりを要求するタマモに横島は本当に食べられるのかと尋ねるが、タマモは即座にうんと気持ちのいい返事を返す。

正直半分くらいは残しそうだなと横島は思うが、まあ残ったら自分が食べてやればいいかとタマモのお代わりのピザを焼くことにした。

ついでにもうすぐテスト終わりの少女が来るからとピザの具材の調理も進めていくと、木乃香達を筆頭に次々と元気な少女達が店にやってくることになる。