平和な日常~冬~
「将来ですか……」
「大学にも行きたいだろう? 学費は心配しなくても僕と学園長先生で用意するから」
そのまま話は高畑の主導で話は続き高校だけではなく大学進学にも及んでいた。
明日菜は相変わらず戸惑い気味だったが。
「まあ大学の話はまだ先だからいいけど、今日は君の学費とアルバイトの件なんだ」
突然将来と言われても答えの出るはずのない明日菜に、高畑はようやくこの日の本題の話に移る。
そんな抽象的な将来の話には戸惑うばかりの明日菜も、現実的なお金の話には真剣な表情になり高畑の話に耳を傾けた。
「僕と学園長先生とで話したんだけど、流石にアルバイトを掛け持ちするのはやり過ぎじゃないかと思ってね」
少し言いにくそうと言うか、遠慮がちに話す高畑を近右衛門は静かに見守っていた。
当初は近右衛門が自分で話そうかとも思ったようだが、高畑が最近親代わりとして意識を持ち始めたので任せたのだ。
「以前にも言ったけど僕に君を預けた人は学園長先生の友人で僕の恩人なんだ。 だから学費や生活費は心配しなくていいし、もっと自由に生きていいんだよ。 せっかく成績も上がって将来の選択肢も広がって来たんだし、アルバイトを完全に辞める必要はないけど減らすなり一つに絞るなり考えたらどうだい?」
幼い頃より高畑や近右衛門は、明日菜の過去を恩人から預かったとだけ伝えていた。
そして学費や生活費は気にしなくていいからと言って来たのだが、明日菜は自立しようとアルバイトを始めたという経緯がある。
ただこの先高等部や大学部に進学することを考えれば、アルバイトを減らして学業にと考える高畑の言葉は決して間違ってないだろう。
「……少し考えていいですか?」
言いにくそうに話していく高畑の表情は、明日菜にとって懐かしいものだった。
明日菜が覚えている一番古い記憶は、あやかとケンカしたことや高畑が困ったり言いにくそうに何かを言っていた記憶である。
今日の高畑はそんな四苦八苦しながら一緒に暮らしていた頃と同じだった。
それにアルバイトの件は、明日菜自身も少し前から考えていたことでもある。
このままやれるとも思うが、少なくとも横島の店と被る夕刊の配達は辞めようかとだいぶ悩んでいたのだ。
結局明日菜はこの日は答えを保留したまま話が終わるが、昔に戻ったような高畑が不思議であり懐かしかった。
「これでよかったのかね?」
「ええ、後は横島君達が助けてくれるでしょうから」
その後明日菜が学園長室から出て行くと、近右衛門は静かに高畑を見つめる。
正直近右衛門は高畑の変わりように不思議そうな明日菜を見て、高畑が不器用だなと改めて感じていた。
高畑は明日菜に対して昔から不器用だったが、もっと素直に自分の気持ちをぶつけるべきではと思うのだ。
そして高畑も近右衛門も明日菜がこの後、誰に相談するかも見抜いている。
はっきり言えば高畑は横島に対して嫉妬のような感情を僅かに抱いていたことを自覚していた。
自業自得とはいえ明日菜が素直に相談出来る相手は木乃香達か横島くらいであろう。
そんな気持ちを抱える高畑だが、現状では自分よりも横島が明日菜には必要だと考えてあえてそちらに誘導していた。
近右衛門はそんな高畑を見守ってやるしか出来ないが。
「大学にも行きたいだろう? 学費は心配しなくても僕と学園長先生で用意するから」
そのまま話は高畑の主導で話は続き高校だけではなく大学進学にも及んでいた。
明日菜は相変わらず戸惑い気味だったが。
「まあ大学の話はまだ先だからいいけど、今日は君の学費とアルバイトの件なんだ」
突然将来と言われても答えの出るはずのない明日菜に、高畑はようやくこの日の本題の話に移る。
そんな抽象的な将来の話には戸惑うばかりの明日菜も、現実的なお金の話には真剣な表情になり高畑の話に耳を傾けた。
「僕と学園長先生とで話したんだけど、流石にアルバイトを掛け持ちするのはやり過ぎじゃないかと思ってね」
少し言いにくそうと言うか、遠慮がちに話す高畑を近右衛門は静かに見守っていた。
当初は近右衛門が自分で話そうかとも思ったようだが、高畑が最近親代わりとして意識を持ち始めたので任せたのだ。
「以前にも言ったけど僕に君を預けた人は学園長先生の友人で僕の恩人なんだ。 だから学費や生活費は心配しなくていいし、もっと自由に生きていいんだよ。 せっかく成績も上がって将来の選択肢も広がって来たんだし、アルバイトを完全に辞める必要はないけど減らすなり一つに絞るなり考えたらどうだい?」
幼い頃より高畑や近右衛門は、明日菜の過去を恩人から預かったとだけ伝えていた。
そして学費や生活費は気にしなくていいからと言って来たのだが、明日菜は自立しようとアルバイトを始めたという経緯がある。
ただこの先高等部や大学部に進学することを考えれば、アルバイトを減らして学業にと考える高畑の言葉は決して間違ってないだろう。
「……少し考えていいですか?」
言いにくそうに話していく高畑の表情は、明日菜にとって懐かしいものだった。
明日菜が覚えている一番古い記憶は、あやかとケンカしたことや高畑が困ったり言いにくそうに何かを言っていた記憶である。
今日の高畑はそんな四苦八苦しながら一緒に暮らしていた頃と同じだった。
それにアルバイトの件は、明日菜自身も少し前から考えていたことでもある。
このままやれるとも思うが、少なくとも横島の店と被る夕刊の配達は辞めようかとだいぶ悩んでいたのだ。
結局明日菜はこの日は答えを保留したまま話が終わるが、昔に戻ったような高畑が不思議であり懐かしかった。
「これでよかったのかね?」
「ええ、後は横島君達が助けてくれるでしょうから」
その後明日菜が学園長室から出て行くと、近右衛門は静かに高畑を見つめる。
正直近右衛門は高畑の変わりように不思議そうな明日菜を見て、高畑が不器用だなと改めて感じていた。
高畑は明日菜に対して昔から不器用だったが、もっと素直に自分の気持ちをぶつけるべきではと思うのだ。
そして高畑も近右衛門も明日菜がこの後、誰に相談するかも見抜いている。
はっきり言えば高畑は横島に対して嫉妬のような感情を僅かに抱いていたことを自覚していた。
自業自得とはいえ明日菜が素直に相談出来る相手は木乃香達か横島くらいであろう。
そんな気持ちを抱える高畑だが、現状では自分よりも横島が明日菜には必要だと考えてあえてそちらに誘導していた。
近右衛門はそんな高畑を見守ってやるしか出来ないが。