日付が変わり次の日のお昼休みになると、さっそく明日菜が高畑に呼ばれて職員室に来ていた。


「せっかくの昼休みにすまないね」

「いいえ、どうせ暇ですから」

この日の朝のホームルームで昼休みに職員室に来るようにと言われた明日菜は、成績がまた悪かったのだろうかと不安な気持ちを抱えながら半日過ごしている。

基本的に明日菜が高畑に呼ばれるのは成績の件くらいであり、中学に入ってからは個人的な話はほとんどした記憶がない。

少し話が逸れるがそもそも高畑と明日菜が教師と生徒の関係に変わったのは、明日菜が中学に進学した時に自分から高畑に先生として接すると言い出したのがきっかけだった。

ただ周りから見て明日菜にはまだ保護者が必要だと感じ、近右衛門などは何度か高畑に保護者として会う時間を作るように言ったのだが、高畑は多忙だったことと明日菜が元気そうなことを理由にさほど真剣に捕らえてなかったし、実際に食事でもと考えても明日菜が不器用なほど教師と生徒の関係にこだわって実現しなかったという過去がある。

結局明日菜は親愛と恋愛の感情の区別が出来ないほど愛情に飢える形になったが、実は現在は以前ほど高畑を求めてない。

無論高畑に対して相変わらず親愛と恋愛の入り混じった感情を抱いてはいるが、横島とタマモの影響もあり以前ほど騒がなくなったのが現状である。

本来明日菜が人恋しくなるはずのお盆なんかは、横島達とずっと一緒で明日菜は寮には寝る為に帰るだけだった。

それに普段の日常も店でのバイトや勉強を教わったりと寂しさを感じる暇がなかったことが、明日菜が高畑のことで騒がなくなった原因だろう。

実際明日菜も木乃香達と同様に横島に対して特別な感情を抱きつつあるが、例によって親愛と恋愛が入り混じっている上に自分が好きなのは高畑だと思っているので明日菜的には横島は友達の一人だと主張している。

ただ明日菜が恋愛と親愛の区別が出来てないことは美砂やハルナやあやかなどにはバレバレであり、その対象が横島に移りつつあることも見抜かれていた。

そんな訳で最近の明日菜が高畑と授業以外で直接話すのは、横島絡みのお出かけを除けば久しぶりだった。


「待っておったぞ、明日菜君」

少し前置きが長くなったが久しぶりに高畑に呼ばれた明日菜は、何故か学園長室に連れて行かれてちんぷんかんぷんの様子である。

何かやらかしたかと少し冷や汗を流すが、当然ながら思い当たることなどあるはずがない。


「本当はもっと早く話すべきだったんだろうけど、話とは君の将来のことなんだ。　来年は三年になるから場合によっては受験も考えなきゃダメだからね」

そんな何の話だろうと戸惑う明日菜に高畑は呼び出した用件を説明し始める。

現状で明日菜の進路は普通に高等部への進学だったが、そろそろ将来を見据える必要があるからと高畑は話していく。

ただ明日菜としては何故自分の将来や進路を、今この段階で高畑と近右衛門に説明されるのか理解出来てなかったが。

今まで放置されていただけに不思議そうだった。