平和な日常~冬~

結局あやかと千鶴はこの件の回答を保留したままこの日は話が終わることになる。

実際のところあやかと千鶴でさえ立場というか状況が違うので、即答出来る問題ではなかった。

現実問題としてパーティー当日予定がない千鶴は手伝いをしても問題ないが、あやかの場合は相手があるのでそうはいかない。

会談の予定を断ってまで手伝ったとなれば、後で何を言われるかわかったもんじゃないのだ。

友人の手伝いをすると言えば聞こえがいいが、会談より手伝いが大切なのかと思われるとあやかの資質自体が問われるだろう。

友好的な姿を見せるだけならば、何も手伝わなくてもいいのではと思うのがあやかの本音だった。

まあ彼女も千鶴同様に魔法協会の存在を知らないので、木乃香の立場を幾分軽く見てはいるが。



一方千鶴が今回参加するには、今後似たようなパーティーに誘われても断れるだけの理由が欲しいという本音がある。

実は千鶴が今までパーティーに出席していたのは、年初めの雪広家主催のパーティーくらいなのだ。

そもそもの問題として那波家は今でこそ近衛家や雪広家と同格に扱われてはいるが、元々明治期より麻帆良学園や魔法協会を支えてきた近衛家や雪広家とは歴史も立場も違い過ぎた。

加えて近衛・雪広両家には那波グループが零細企業から現在に至るまでには多大な恩があり、公式の場で三家が揃う時は那波家が必ず上座を譲っているのが実情だった。

まあ近衛家も雪広家も三家の中に序列を作るのを避けてるので盟友扱いではあるが、立てるべきところでは当然立てているしパーティーなどがあまり好きではない千鶴も雪広家主催のパーティーだけは必ず出席している。

そういう事情がある千鶴にとっては近衛家の娘の木乃香の手伝いだから出席したと言うのは、一定の筋が通るのが現状だ。

ただここで難しいのは、三家の間では序列を作らずバランスを取るというのが基本姿勢であるからに他ならない。

事実上那波家は両家を立ててはいるが、立て過ぎて後塵を拝するとまで行くのは困るのが現実だった。

麻帆良学園においても関東魔法協会においても三家が対等の盟友だというのが現状であり、上手くバランスを取っていることが成功の秘訣でもある。

結果千鶴としてもあやかの出方を見極める必要があるし、千鶴だけが木乃香に加担してると見られるのは正直あまりよくない。

たかが子供のやることで少し大袈裟な気もするが、雪広グループも那波グループも基本的には株式非公開の非上場企業なので将来的に千鶴やあやかが何からの形で重要なポジションを占めるのは確実視されてるので仕方ないことだった。


ちなみに今回横島の提案が微妙だった理由についてだが、ぶっちゃけ横島はそこまで三家の関係を詳しく知らないというのが大きい。

ある程度は土偶羅の報告で知ってはいるが、自分が深く関わる気のない三家の根幹に関わる関係についてはほとんど知らないのが実情である。

今回も三人で仲のいい姿を見せれば悪くはならないだろうとしか考えてない。

あやかが忙しいのはチラリと聞いていたが、こちらも詳しく日程までは聞いてなかった訳だし。

元々細かい調整は土偶羅や夕映やあやかに任せてる横島は考えてるようで考えてなかった。

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