平和な日常~冬~

一方塔の内部の散歩に出かけたタマモ達は、シンプルではあるがまるで宮殿のような部屋の数々に楽しそうに散歩をしていた。

マジックアイテムの明かりが照明になってはいるが、廊下などはあまり明るくなくほの暗いくらいである。

元々エヴァと茶々丸達などしか居ない別荘なため、さほど夜に明かりが必要ないのだろう。


「トコロデ、サモ当然ノヨウニ居ルオ前ハ誰ダ?」

「ぽー!」

「はにわへいっていうんだよ。 わたしたちのかぞくなの」

タマモ達と一緒に散歩に来たチャチャゼロは、エヴァがスルーしたハニワ兵について尋ねていた。

先程からタマモやさよと一緒に喜んだりして騒いでいるハニワ兵だが、当然ながら明らかに不自然なのである。


「アノ男ヤッパリ変ダナ」

チャチャゼロに声をかけられたハニワ兵は、自身の影から愛用のスケッチブックを取り出すと《ハニワ兵です。 よろしくお願いします》と丁寧に挨拶をペンで書く。

端から見るとゴーレムの一種に見えるハニワ兵だが、相変わらず表情が豊かで個性的なのでチャチャゼロは主たる横島が変人なのだとシミジミと感じる。


「ハニワさんはお裁縫がとっても上手いんですよ。 私達の私服はほとんどハニワさんの自作なんですから」

「イヤ、ゴーレムに裁縫ナンテヤラセルナヨ」

「ハニワさんの趣味なんですよ」

この日はさよもいた為にさよがハニワ兵の凄いところを褒めながら語るのだが、日頃は掃除や洗濯をしており趣味がテレビ鑑賞とお裁縫だと教えるとチャチャゼロはゴーレムに何をやらせてるんだと呆れていた。

まあエヴァも人形に身の回りの世話をさせてるが、それをハニワのゴーレムにやらせるのはどう考えても趣味が悪いと思うらしい。


「ぽ!」

そんな風にチャチャゼロに否定されてしまったハニワ兵だが全く気にする様子もなく、影から今度は何のラベルの張られてない異空間アジト産のワインの瓶を一本出すと、お土産だとスケッチブックで書いてチャチャゼロに渡していた。

どうやら始めて他人の家に遊びに行くのでお土産を持参して来たようだ。

ワインを選んだのは単純にエヴァとチャチャゼロがお酒好きだとタマモが知っていたからである。

ちなみに後でエヴァに渡すもう一本と、茶々丸へのプレゼントには自作の服まで用意していた。

そもそも今回のハニワ兵の同行はタマモが強く望んだ実現したのだが、随分前からさよとタマモと三人で遊びに行くにはお土産が必要だと盛り上がって用意したようだ。


「ナンダ、気ガ利クジャネエカ。 俺ハチャチャゼロッテンダ。 ヨロシクナ」

そして突然ラベルも張られてないワインを渡されたチャチャゼロは訝しげであったか、中身が本物のワインだと知ると上機嫌になる。

チャチャゼロもまた意外と単純な性格らしい。

どこか腰が低いハニワ兵と態度がでかいチャチャゼロのやり取りが、横島とエヴァの様子に似てるのは気のせいではないだろう。

そしてチャチャゼロとハニワ兵が仲良く話す姿に、タマモは満足げに胸を張って頷いていた。



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