平和な日常~冬~

さて次の日になるとクリスマスグッズを飾った横島の店では、すっかり雰囲気に変わっていた。

店内には二メートルほどの大きなクリスマスツリーが三本置かれており、カウンターとスイーツのショーケースにもクリスマスグッズで飾られている。


「麻帆良でクリスマスに大規模なイベントがないって少し意外だな」

「基本的に夏休みと冬休みは学生が減りますからね。 サークル単位なんかでは細々としたイベントはあるですよ」

せっかくだからと店内に流れる音楽もクリスマスソングにしてみた横島だったが、少し暇だった為か報道部発行の学園雑誌を読んでいた。

学園雑誌は主に学園の行事やイベントの記事が書かれた雑誌であり、今横島が読んでるのは十二月のイベント特集だったがサークル単位ではいろいろイベントが行われるが学園単位でのイベントは例のパーティーくらいである。

ただ夕映いわくそれはやはり麻帆良の特徴であり、夏と冬は生徒が帰省するのでイベントが少なくないらしい。


「横島さん、ここどうやるの?」

そんな横島だが全くやることがない訳ではなくこの日は明日菜とのどかに勉強を教えていたが、最近はのどかが成長した為に横島が教える部分はだいぶ減っている。

まあそれでも時々のどかが説明に困ると横島が教えていたが。


「また山かけしなきゃならん時期だな」

この半年で明日菜とのどかの学力は見事に上がり成長している。

それは明日菜にのどかが丁寧に教えることで双方共いい相乗効果になっているが、実はそれは横島が狙った訳ではなく全くの偶然だった。

教師に聞いてもなかなか理解出来ない明日菜と性格の問題で教師に聞けなかったのどかを同時に教えていたら、いつの間にか二人が協力しだしただけである。

元々親しいようで交流が多くなかった明日菜とのどかは、この件以来一緒に勉強する時間が多くなったのだ。

まあ横島とすれば教師がもう少し二人を理解してやればとも思うが、忙しそうな刀子や高畑を見てると仕方ないのかなとも思う。


「あれも結構大変なんだよなぁ」

それから横島の思考はイベントからテストに移るが、何故かテストを重ねる事に山かけをアテにする人が増えることが若干プレッシャーであった。

山かけに関しては特にズルをする訳ではなく真っ当に予想してる横島としては、当たらない可能性もない訳ではない。

周りの期待値が高くなりすぎているとシミジミと感じる。


「そういえばパーティーに出すスイーツ決まったんですか?」

「うんにゃ、まだだよ。 一度新堂さんとも話してみようかと思ってな」

そのまま横島は学園雑誌を閉じて山かけの為にのどかのノートと教科書を見始めるが、明日菜はふとパーティーに出すスイーツが決まったのかと尋ねた。

木乃香も随分悩んでいたが今回は横島も悩んでいる。

麻帆良祭の時は割とポンポンとアイデアを出した横島にしては決断が遅いことが気になるらしい。

ただ横島としては実はスイーツを決める前に木乃香と同時優勝した新堂に会おうと考えていた。

三連覇した彼女ならば去年までの様子を知っているし、最低限同じ物を作るのはまずいかなとも考えている。

他にも同じく同時優勝した超包子のコンビは協力して料理を振る舞うらしいので、横島は一応新堂と事前に話しをする必要があると会う約束をしていた。



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