平和な日常~冬~

結局横島は高級なショップで少女達にお説教されることになるが、流石に少女達も人目が気になるのかお説教は早々と終わっていた。


(普通は太っ腹だって褒められるはずだろうに……)

ただ横島とすればせっかく奮発したにも関わらず、逆にお説教されたことで少しばかり落ち込んでいたが。

本来の精神年齢はいい年した大人なので、自分がそこまで騙されやすく見えるのかと正直軽くショックを受けていたりもする。

最終的に微妙に落ち込んだ横島を、タマモがよしよしと頭を撫でて慰める姿がまた人目を引いていたが。


「おー! 木乃香似合うじゃん!!」

さてドレスを選んでいた木乃香だが、一番サイズが近いドレスを試着して見せていた。

季節柄もあって少し暖かみのある色合いの落ち着いたドレスだったが、若干幼さの残る木乃香にも十分似合っている。

化粧をしてないことやアクセサリーがないことで若干物足りなさがあるが、主賓でもないパーティーではちょうどいいのかもしれない。


「しかしこうして見るとネックレスが欲しくなるな。 あんまり派手じゃない真珠のネックレスとか。 よし買って……」

「はいはい、ダメったらダメよ」

そんな木乃香がドレスを着てファッションショーのようにクルリと回って見せると、少女達と一緒に横島のテンションも元に戻る。

あまり派手なドレスではないが、大和撫子を地で行くような木乃香はその方が似合っていた。

ただやはりアクセサリーは必要だなとシミジミと感じた横島が、先程のお説教を忘れたかのように買ってやろうと言いそうになるが明日菜に強制的に止められて終了だった。


「別に下心なんてないぞ!」

「下心ないって言うけど本当に全く下心がないと、女として興味がないって言われてるみたいで逆に素直に喜べないわよ。 まあ下心が見えるのも嫌だけど」

明日菜に止められた横島は昔の経験から下心なんかないと主張するが、今度は美砂に下心が全くないのもそれはそれで喜べないと言われてしまう。

しかも下心が見えるのも当然嫌だと扱くまともな意見を言われると横島の経験では返す言葉はない。

どちらかと言えば美砂や桜子なんかは特に横島の子供扱いが嫌な訳で、女性として恋愛対象外のような扱いは正直微妙な気持ちになるようだった。


「真珠のネックレス似合うのにな~」

「あんたは木乃香のお父さんか!」

「その若さで父親目線は不自然です」

美砂の指摘に横島は少しだけ真面目に考えるが、かつての下心が丸出しで嫌われた経験からどうしていいか分からない。

結局考えるのを放棄して純粋に真珠のネックレスが似合うのにと残念そうな横島に対し、少女達からは父親目線は止めるようにと突っ込まれることになる。

横島には一切悪気はないが、少女達からすると恋愛対象の横島に父親目線で見られるのは誰も嬉しくないらしい。


「タマモ、難しいな」

「うん、むずかしい」

その後木乃香は三着あったドレスを試着していくが、横島は年頃の女の子の難しさを痛感し事情を理解してないタマモと一緒に悩むことになる。



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