「さよちゃんいいな～」

横島に好きな服を選ぶように言われたさよは少し悩みながらも服を見ていくが、美砂やまき絵なんかはそんなさよを羨ましそうに見つめていた。

さよに関しては横島の知り合いの子だと説明しているが、両親はやはり居ないと告げている。

身体が弱く祖父母と一緒に今まで生活していたが、現在は体調がよくなったので麻帆良に来たことになっていた。

横島はお世辞にも嘘が得意ではないさよの為にある程度設定を考えたが、基本的には家で療養していたので世間知らずだと説明している。

従ってさよの親代わりは横島ということになっており、実質的には兄のような感じだが保護者が横島であることには変わりない。

まあ少し話が逸れたが基本的にさよやタマモにかけるお金が一般的感覚を超えてる横島を見ていると、羨ましくなるのは仕方ないのだろう。

実際タマモのお土産にしても普通の親ならば許すはずもない訳だし。


ただ日頃の美砂やまき絵ならばここで横島に服が欲しいとねだるところだが、美砂もまき絵も今回はそこまで言うつもりはなかった。

横島の場合は二つ返事で本当に買ってくれそうなだけに逆に言い出せずにいる。

日頃から割と横島に迫るような美砂でさえ、服を買って貰うのはやり過ぎだと考えているからだろう。

まして横島は女に騙されて女性不信だと彼女達は信じていることから、その辺りに関してはきちんと気遣いしていた。


「ん？　せっかくだからみんなにも一着ずつ買ってやろうか？」

しかし横島はそんな少女達の気遣いを簡単に無駄にするように、簡単に服を買ってあげると言ってしまう。

ちょっと高いが基本的にお金に困ることがない横島は相変わらず軽かった。

まあ男としての見栄や、少女達にいいところを見せないとの気持ちも当然あるが。


「横島さん、ダメです」

金ならあるから心配するなと胸を張る横島だったが、呆れたような疲れたような夕映により一言で止められると周りの少女達も当然だと言わんばかりにコクコクと頷いていた。


「どうせ木乃香ちゃんのドレスを取りに来る時にまた来るんだから、みんなも注文すりゃいいだろ。　ちょっと早いけどクリスマスプレゼントってことで」

「くりすますぷれぜんとは、さんたさんがもってくるんだよ」

夕映達に止められるのはなんとなく予想していた横島も、美砂達が全く乗り気じゃないことには少し驚いている。

日頃の彼女達のノリならラッキーと喜びさっそく服を選びそうなのだから、何故それほど反応が悪いのか不思議そうであった。

加えて後付けのように買ってあげる理由をクリスマスプレゼントだと言うが、今度はタマモがクリスマスプレゼントはサンタさんが持って来るものだと主張すると横島も少女達も笑うしか出来ない。


「マスター、簡単に女の人に貢いだらダメだって」

「そうだよ。　私達じゃなかったらまた騙されるよ」

結局横島は夕映達ばかりではなく美砂達やまき絵達にまで、簡単に女の人に貢いではダメだとお説教されてしまう。

そんな少女達に横島は自分は大丈夫だからと主張するが、騙される人はみんな自分は大丈夫だと言うものだと逆にお説教が増えるのだから横島は困ったように笑うしか出来なかった。

ちなみにデザイナーの女性や店員の女性はそんな横島と少女達の関係を見て、微笑ましい物を見るような笑みを浮かべて見ていた。