ここで麻帆良祭について少し説明するが、学園都市麻帆良最大のイベントである麻帆良祭は麻帆良の全学校による合同学園祭である

その規模は世界の祭りを見ても最大規模であり、準備に関しても長い期間で行われている

学園側が公式に認めてる準備期間は５０日前からなのだが、各サークルや団体は半年前や一年前から準備を進めてることも珍しくない

麻帆良の街では準備期間からすでにお祭り騒ぎに入るため、五月の中頃からすでに麻帆良では本格的な麻帆良祭の準備に入っていた

そんな訳で刀子のような魔法先生は、この時期が一年で一番忙しい季節である

表の仕事である教師としてだけでも忙しいのに、麻帆良祭のおかげで人の出入りが多いだけに気を抜く暇がない日々が続くのだ


少し余談だが、広大な私有地である麻帆良学園には独自の警備部門が存在する

こちらは正式な組織として存在しているが、人員の何割かは魔法協会の人間であった

そもそも関東魔法協会に所属する人間の全てが教師をしてる訳ではなく、麻帆良学園内の様々な仕事に従事している

基本的に警備部門は学園内の表の警備を担当しているが、裏の警備員との使い分けや連携などを指揮する部門でもあった

基本的に関東魔法協会の人間は表の職業を持つが、実は教師が一番仕事がキツくて不人気である

中でも刀子はその戦闘力から最も危険な仕事や厄介な仕事を回される事が多く、本人は人知れず不満を抱えているのだが……


「そういえば、あちこちに出店なんか出てますね」

「ここの子達って本当に騒ぐのが好きなのよ。　私達教師は生徒がハメを外し過ぎないようにいろいろ大変なの」

先日大学部に行った時もいろいろとイベントの準備をしているのを横島は見て来たが、他にも気の早い人達はすでに出店を出している場所なども僅かにあったのだ

横島は知らなかったが、すでに麻帆良祭の準備期間でありこの時期は日に日に賑やかになるらしい


「そういやあ賑やかなイベントだって聞いた気が……　まあこの店は関係ないか」

「油断しない方がいいわよ。　飲食店は軒並み客が増えるから、麻帆良祭期間中は臨時バイトの確保に苦労する店もあるらしいし」

麻帆良祭に関して横島はあまり深く考えてなかったが、飲食店はかなり繁盛して大変なイベントらしかった

少なくとも横島一人では無理だろうし、臨時バイトを確保するのも大変なのだと刀子はそれとなく忠告する


「そうなんっすか～　一応うちも一人バイト頼んでる子が居るんすけど、お祭り期間中に働かせるのはかわいそうだな」

刀子の忠告に横島は少し考えるが、木乃香に頼むよりは休みにしてしまおうかと考えてしまう


「私も麻帆良祭は楽しんだ経験がないわ。　生徒達の後始末なんかで忙しいし、デートも出来やしないのよ」

腕を組み麻帆良祭の対応に悩む横島に、刀子は僅かに愚痴るようにつぶやく

魔法教師の刀子にとって麻帆良祭はあまり楽しいイベントではないらしい


「デートの相手ならいくらでも居るでしょう？」

「相手の問題じゃないのよ。　時間がない事もあるけど、教師がデートなんてしてたら目立っちゃうの。　立場上麻帆良の街じゃ気を抜けないのよね」

朝から少しブルーな気分になる刀子だったが、時計を見ると時間なようで気合いを入れるように店を後にしていく