平和な日常~冬~

さてこの日の横島だが、宮脇食堂や病院から帰宅すると特に何かをする訳でもなくノンビリとしていた。

正直伸二が居た約一ヶ月はゆっくりする時間が少なく働き過ぎたと思ってるのだ。

サンタクロースの絵を描き始めたタマモを見守りながら、横島は中古車の雑誌に目を通す。

随分前から屋根のある車を買おうと考えている横島だが、忙しかったり肝心な時に決断出来なかったりと未だに悩んでるだけだった。

根が小心者な為、なかなか決めれないというのが本音らしいが。


「クリスマスもあんまりいい思い出がないんだよなぁ」

夕映が横島と一緒に戻って来たことで明日菜達と夕映は店に飾るクリスマスグッズをどうするか考えているが、正直横島はクリスマスにいい思い出がなくテンションが上がらない。


「さんたさんがきてくれるんだよ。 わたしはさんたさんにぷれぜんとするんだ!」

「サンタクロースにもプレゼント渡すのか? 普通はサンタクロースからプレゼント貰うんだぞ」

あまり乗り気ではない横島にタマモはサンタクロースが来るから横島にも元気を出してと言いたいのだろうが、横島も相変わらずのタマモのプレゼント好きに若干不思議そうである。

まあただの子供じゃないからと言えばそれまでだが、本来妖狐はこれほど人懐っこい訳ではない。

さよや木乃香達の影響なのは分かっているが、この先どう成長していくか横島にも分からなかった。


(サンタクロースってこの世界でもあの酔っ払いなのか?)

そんなサンタクロースにプレゼントをするのを楽しみにしてるタマモの姿に、横島はかつての世界で会った本物のサンタクロースを思い出すが、この世界でもサンタクロースはあんな酔っ払いなのかと思うと微妙な心境になる。

まあサンタクロースが居たとしても来る確率は決して高くはないし、横島としてはタマモが待ってるサンタクロースの代役を土偶羅にでも頼もうかと考える程度だが。


「横島さん、今日は早めにお店閉めて買い物行かへん? パーティーの礼服も買わなあかんし」

その後もタマモの描いたサンタクロースの絵を見てマッタリとしている横島だが、木乃香達に誘われて買い物に行くことになる。

クリスマス関連のグッズを買わねばならないし、横島も木乃香も学園主催のパーティーに出るのに着る服がないのだ。

横島の場合は異空間アジトに古いスーツなら多分あるが、恐らく木乃香達に見せてもいい反応をしないことは分かっている。

結局この日はお昼で店を閉めてみんなで買い物に行くことになった。


「それじゃショッピングに出発!」

横島と木乃香達がショッピングの話をして店を閉めるまでに三時間ほど店を営業したが、何故かショッピングに行くメンバーが増えている。

例によって美砂達と千鶴に、この日はまき絵・亜子・裕奈・あきらの四人も何故か加わっていた。


「近くの商店街かショッピングモールに行くだけのつもりなんだけどな~」

本来横島達は近くの商店街かショッピングモールで買い物をする予定だったが、予期せぬメンバーが増えたことで話が勝手に大きくなり東京まで買い物に行くことが決まる。



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