平和な日常~秋~3
その日も夕方になると、厨房ではオーブンからスポンジ生地が焼ける甘い匂いが広がっている。
伸二は相変わらずカレーの作り方を学んでいるが、この日は木乃香もケーキを焼いていた。
料理大会以降は表立った活動はしてない木乃香だが、経験を積む意味もあり二日に一度はケーキを焼くようにしているのだ。
本来の技術とは成功と失敗の積み重ねであり、それは横島のように一種のズルをしない限りは変わらない。
木乃香としては来月の学園主催のパーティーでスイーツを披露しなくてはならないこともあり、最近では横島と一緒に新しいケーキを焼く機会を増やしている。
「定番なのはやっぱブッシュ・ド・ノエルかな。 知名度が日本だと高いし」
「この前のクグロフも美味しかったわ~」
そんなオーブンから甘い香りが漂う中で焼き上がりを待つ横島と木乃香は、来月のパーティーで披露するスイーツの話をしていた。
ここ最近横島はクグロフやパネットーネなどのヨーロッパのクリスマスの定番スイーツを何品か作って木乃香と相談しているが、どのスイーツにするかは決めかねている。
もう一人の料理大会優勝者の新堂は恐らく本格的なケーキであり、木乃香も負けないだけの物を披露しなくてはあの大会で戦った人達や選んでくれた人達に示しがつかない。
まあ実際には練習期間も十分にあり当日は横島も加わるので不安がある訳ではないが、定番か斬新かといろいろ悩んでおり作るスイーツは決まってなかった。
「あれもオーストリア辺りだと有名らしいんだがな。 日本人だと正直あまり知らんだろう」
真ん中に穴が空いた形のスイーツであるクグロフとは、オーストリアなどで有名なスイーツである。
かの有名なマリー・アントワネットの好物としても有名でありパーティーで披露してもおかしくはないのだろうが、日本での知名度はいま一つなのがネックになっていた。
パーティーに集まるのは必ずしもスイーツ好きな人々ばかりではないし、近右衛門のような年配者も少なくない。
「パーティーにはおじいちゃんがお世話になってる人も多いと思うんよ」
実は横島と木乃香が一番悩んでるのは、年配者にも喜んでもらえるスイーツという点である。
学園主催のパーティーということは生徒は当然ながら、学園の関係者も多く雪広や那波などの協力企業の人間も来るらしい。
木乃香は日頃祖父がお世話になっている人達にも、喜んでもらえるスイーツが作りたいと考えていたのだ。
実際学園長の孫娘という木乃香の注目度は低くはない。
今まではあえて近右衛門が木乃香をパーティーに呼ばなかったので、出席すれば相応の注目を集めることは確実である。
そういう意味では日頃近右衛門が世話になっている年配者にも、喜んでもらえるスイーツが必要だと木乃香は考えていた。
まあこの辺りの入れ知恵は夕映かあやかなのだろうが。
「和風のケーキでも考えるか? いやいっそ和菓子にするのも……」
その後も横島は焼き上がったスポンジ生地の出来を確かめ木乃香への指導をしながら、どんなスイーツがいいか考えるが早々簡単に決まる物ではない。
ただ木乃香はこうして横島とあれこれと話しながら料理するのが楽しいので笑顔だったが。
伸二は相変わらずカレーの作り方を学んでいるが、この日は木乃香もケーキを焼いていた。
料理大会以降は表立った活動はしてない木乃香だが、経験を積む意味もあり二日に一度はケーキを焼くようにしているのだ。
本来の技術とは成功と失敗の積み重ねであり、それは横島のように一種のズルをしない限りは変わらない。
木乃香としては来月の学園主催のパーティーでスイーツを披露しなくてはならないこともあり、最近では横島と一緒に新しいケーキを焼く機会を増やしている。
「定番なのはやっぱブッシュ・ド・ノエルかな。 知名度が日本だと高いし」
「この前のクグロフも美味しかったわ~」
そんなオーブンから甘い香りが漂う中で焼き上がりを待つ横島と木乃香は、来月のパーティーで披露するスイーツの話をしていた。
ここ最近横島はクグロフやパネットーネなどのヨーロッパのクリスマスの定番スイーツを何品か作って木乃香と相談しているが、どのスイーツにするかは決めかねている。
もう一人の料理大会優勝者の新堂は恐らく本格的なケーキであり、木乃香も負けないだけの物を披露しなくてはあの大会で戦った人達や選んでくれた人達に示しがつかない。
まあ実際には練習期間も十分にあり当日は横島も加わるので不安がある訳ではないが、定番か斬新かといろいろ悩んでおり作るスイーツは決まってなかった。
「あれもオーストリア辺りだと有名らしいんだがな。 日本人だと正直あまり知らんだろう」
真ん中に穴が空いた形のスイーツであるクグロフとは、オーストリアなどで有名なスイーツである。
かの有名なマリー・アントワネットの好物としても有名でありパーティーで披露してもおかしくはないのだろうが、日本での知名度はいま一つなのがネックになっていた。
パーティーに集まるのは必ずしもスイーツ好きな人々ばかりではないし、近右衛門のような年配者も少なくない。
「パーティーにはおじいちゃんがお世話になってる人も多いと思うんよ」
実は横島と木乃香が一番悩んでるのは、年配者にも喜んでもらえるスイーツという点である。
学園主催のパーティーということは生徒は当然ながら、学園の関係者も多く雪広や那波などの協力企業の人間も来るらしい。
木乃香は日頃祖父がお世話になっている人達にも、喜んでもらえるスイーツが作りたいと考えていたのだ。
実際学園長の孫娘という木乃香の注目度は低くはない。
今まではあえて近右衛門が木乃香をパーティーに呼ばなかったので、出席すれば相応の注目を集めることは確実である。
そういう意味では日頃近右衛門が世話になっている年配者にも、喜んでもらえるスイーツが必要だと木乃香は考えていた。
まあこの辺りの入れ知恵は夕映かあやかなのだろうが。
「和風のケーキでも考えるか? いやいっそ和菓子にするのも……」
その後も横島は焼き上がったスポンジ生地の出来を確かめ木乃香への指導をしながら、どんなスイーツがいいか考えるが早々簡単に決まる物ではない。
ただ木乃香はこうして横島とあれこれと話しながら料理するのが楽しいので笑顔だったが。