平和な日常~秋~3

同じ頃タマモは近所の公園を散歩していた。

メンバーはいつもと同じ庭に住み着いている猫達とビッケとクッキにチャチャゼロである。

公園にある木々の紅葉もそろそろ終わりに差し掛かっており、一枚また一枚と落ちてゆく紅葉を見ながらみんなで休憩するのが最近のタマモ達の日課だった。


「きょうはほしがきだよ」

そんなこの日の散歩中のおやつは、庭の柿から作った干し柿と温かいお茶である。

タマモも収穫から手伝った干し柿が先日食べ頃になったので、ちょうどこの日の朝には茶々丸を通してエヴァにもおすそ分けした物でもあった。


「最近ゴ主人ガ元気ナクテナァ」

タマモはリュックからおやつとお茶を出すと自分で食べつつ、身体が自由に動かせないチャチャゼロにも食べさせていく。

チャチャゼロはそんなタマモに何故か少し困ったような表情で愚痴をこぼし始める。

二人が猫達と一緒に散歩をするようになってまだ一ヶ月程度だが、雨の日以外はほぼ毎日散歩に出かけていた。

相変わらず会話が噛み合ってない時も多々あるが、タマモは楽しそうだしチャチャゼロも満更でもない様子である。

そのせいか最初こそチャチャゼロがタマモの話を聞いていただけだったが、最近はチャチャゼロから自分やエヴァの話をすることもあった。

まあさほど深い話や子供に聞かせられない話はしないが、チャチャゼロの話をタマモはニコニコと聞いている。


「じゃあ、みんなでいっしょにごはんたべよう」

そんなチャチャゼロの愚痴を聞いたタマモは少し考えた末に一つのアイデアを口にした。

実は最近エヴァは呪いの研究絡みで悩んでるようで、茶々丸とチャチャゼロは密かに心配しているらしい。

無論タマモにはそんな裏事情は言わないが、つい愚痴をこぼしてしまったのはチャチャゼロもこの不思議な友人関係が結構気に入ってる証だろう。

タマモはそんなチャチャゼロに一緒にご飯を食べようと誘っていた。

前回の松茸パーティーのようにまた一緒にご飯を食べれば元気になるとタマモは思ったらしい。


「イヤ~、俺ガ喋ッタッテ言イワレルノハマズイ」

「じゃあ、ひみつにするよ。 わたしにまかせて!」

一緒にご飯を食べれば元気になると言い切るタマモに、チャチャゼロはそこまで簡単な問題ではないと考える。

それに元気がないなんて喋ったことがバレると、チャチャゼロの立場的にもあまりよろしくなかった。

それでもタマモは不安げなチャチャゼロに自分に任せてと胸を張るが、チャチャゼロはタマモがそんなことを上手くやれるとは思えず逆に困ってしまう。


「ひみつはぜったいにしゃべっちゃだめなんだよね。 わたししってるよ。 それによこしまもまたいこうっていってたもん」

張り切った様子で秘密は守ると約束するタマモにチャチャゼロは余計なことを言ったかと少し後悔するが、すでにタマモはやる気満々であり何故か自信ありげである。

今までタマモは秘密だと言われたことは必ず守って来たし、エヴァの家にもまた行こうと横島と約束したことも覚えていた。

本当に大丈夫かと不安げなチャチャゼロを前に、タマモはまた一緒にご飯を食べに行くように横島を誘うことを約束していた。



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