平和な日常~秋~3

その後高畑達や刀子達が帰ると二階のリビングで寛いぐ横島だが、いつものようにパソコンにて土偶羅からの報告に目を通す。

相変わらず情報量が多いので流し読みに近いが、最低限は目を通さないと後で土偶羅に怒られるのだ。

尤も土偶羅からすると報告は最低限でしかないのだが。


(厄介な連中だな)

そんなこの日の報告で横島の視線が止まったのは、フェイトが地球側に来ているとの情報だった。

各国魔法協会の目をかい潜り、地球側の霊的な要所や宗教の聖地や妖魔などが封印されてる場所を中心に調べているらしい。

目的は言わずと知れたことだが、彼らの主たる創造主を探しているのだろう。

今のところ日本国内には潜入してないが時間の問題であり、厄介なことに現状の魔法協会では発見すら難しい。

土偶羅からはフェイトが姿形はもちろんのこと思考や霊波の質すらも変える変化の術を使用してるとの情報であり、高畑や近右衛門でも発見は不可能だろうとのことだ。

加えて現状でフェイトを本気で探してるのはメガロメセンブリアくらいであり、地球側の魔法協会の反応は鈍かった。

元々秘密結社完全なる世界は魔法世界ではいろいろやったが、地球側ではナギ達と戦ったくらいしか記録がない。

地球側の魔法協会はどちらかと言えば彼らそのものを警戒すると言うよりはメガロ側の情報収集に熱心であり、フェイトに絡むメガロ側の陰謀を警戒して巻き込まれないようにと神経質になっている。

そしてそれは関東魔法協会に関しても現状では似たようなもので、関西呪術協会との情報共有や緊急時の協力体制は整えつつあるが積極的にフェイトを探してもいなかった。

無論情報は欲しいが下手に動くと薮蛇になる可能性も低くはなく、何より他の魔法協会が動かぬ中で自分達だけ動くのは目立ってしまう。

結局のところ現在の完全なる世界の規模や状況が不明なままでは動きたくても動けないのである。

実際には関東魔法協会は雪広や那波と協力しながら諜報活動も強化してはいるが、その成果が出るのはまだまだ先になるだろう。

資金的な面はすぐに対応出来ても諜報活動が出来る貴重な人材はそう簡単に増える訳ではないのだから。

最終的には明日菜を守り隠す計画はあるものの、世界樹の地下の創造主に関しては事実上防衛は諦めている。

まあ自分達から秘密を暴露する訳ではないが、見つかったら復活の邪魔はしない代わりに速やかに日本国内から出て行って頂く計画で纏まりつつあった。

近右衛門達も別に好きでそんな決断をした訳ではないが、はっきり言えば他に方法がないのである。

メガロメセンブリアがもう少し頼りになるなら共同で始末するなり防衛するなり方法はあるが、現状で彼の存在をメガロに知られれば今度は麻帆良が完全なる世界を匿ったたとでも称して悪者にされることは明らかなのだ。


(参ったな……)

横島はそれらの情報を頭に入れて今後どうするべきか悩むことになる。

正直横島と土偶羅ならば始末するのは難しくはないが、本音では横島は彼らには関わりたくない。

加えて現状でフェイトの存在は、メガロにとっても脅威であり横島達にとっては使える手札でもあった。

下手に横島達が完全なる世界を潰すとメガロ側の目が麻帆良に向く可能性も否定出来ない。

とりあえず横島としては土偶羅に任せるしか現状では方法はなく、当面は様子見になるが最悪の場合は明日菜の存在が知られる前に始末することも覚悟しておかねばならなかった。



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