平和な日常~秋~3

「本音を言えば向こうの国よりは彼らの方が僕には理解出来るかもしれない。 衆愚政治とまでは言わないけど、向こうの国の為政者は世界の未来を本気で考えてる者は少ないですから」

高畑から出た意外過ぎる言葉に、明石とガンドルフィーニの二人は絶句してしまう。

そもそも麻帆良での高畑は、メガロメセンブリアとの融和派の筆頭だと見られている。

彼は実際にそんなことは全く口にしてないが、現在の関東魔法協会でメガロメセンブリア系の魔法使いと一番交流があるのは高畑なのだ。

ガンドルフィーニのように魔法世界出身の魔法使いは、あまり口外はしないが本音ではメガロ側との融和を望んでいる者もそれなりに存在する。

そういう意味では高畑が麻帆良とメガロを橋渡ししてくれると勝手に期待してる者も多い。


「動きたくても動けないんですよ。 向こうは。 力に従う者は居ても信頼する者は居ないですから」

そのまま絶句して言葉が出ない二人に高畑は少し困ったような表情で、明石が始めに語った静か過ぎる魔法世界の状況を一言で語った。


「そんなに状況が悪いのか……」

「そもそもの問題として国家という存在に本当の信頼をおける国などないのかも知れませんけどね」

予想外の驚きから最初に回復したのは明石だった。

彼個人はメガロとの融和派ではないが、十年前ほどに無くなった妻は融和派である。

実は明石の妻が亡くなった件が、麻帆良とメガロが現在においても絶縁状態が続く一つのきっかけでもあったのだが、まあその件はまたの機会に。

ちなみに明石は自身は中立派に近く麻帆良においては標準的な考えの持ち主である。

いずれは和解が必要だとは考えてはいるが、現実的に考えると和解は難しく将来に期待する程度だ。

現時点で麻帆良が行き詰まっているならともかく、上手くいってるだけにメガロとの和解を積極的に目指す者ははほとんどいない。

実際にメガロに支配されてる地球側の魔法協会の状況があまり良くないというのもあるが。

メガロ側の魔法協会で一番上手く行ってるのはアメリカのジョンソン魔法協会だが、それは地球において実質的な世界の覇権国家であるアメリカゆえの成功とも言えた。

基本的に地球側においても国家の総合的な力が魔法協会の力に密接に影響している。

関東魔法協会は反メガロの筆頭に位置する魔法協会になっているが、日本の影響力に比べると大きいのは異例であった。

それとこれは余談だが、関東魔法協会は反メガロではあるが反米ではない。

アメリカはメガロメセンブリアとは地球側で一番親密な関係ではあるが、一方で地球側の反メガロの魔法協会ともそれなりに上手く付き合っている。

まあ魔法協会と言っても様々あり一概には纏められないが、基本的に先進国の魔法協会は自分達の権利を脅かされない限りは政治に関わりはしなかった。

関東魔法協会としては自分達の権利と雪広な那波などの支援企業を不当な扱いをしない限りはアメリカの覇権主義に口を挟まないし関わりもしない。

実のところ反メガロの筆頭にされている関東魔法協会だが、本人達は結構迷惑しており反メガロ側が反米に染まらないように気を使ってもいる。

アメリカのやり方の良し悪しは別にして、現実的に考えると他のどこかの国が世界の覇権を握るなるなら、現状のアメリカが一番無難だというのが近右衛門達幹部の偽らざる本音だった。



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