平和な日常~春~

実は探検部にはラテン語を翻訳できる人があまり居なく、短期間で正確に翻訳した横島に頼みたいと夕映に話が来ていたらしい

まあ横島が翻訳などを好まないと気付いていた夕映が、すでに丁重に断っていたのだが……

妙に息が合うというか、夕映は普段の横島の考えをなんとなく理解していたようだ

その後時間になり図書館探検部定例発表会が行われるが、それは真面目で緊張感に包まれたものだった


(イマイチ喜びどころがわからん)

貴重な蔵書が発表されたり新しいルートが発表されると会場はざわめきの声が上がるが、横島にはイマイチ彼らの気持ちが理解出来なかった

そんな独特の空気の中で夕映が代表として発表するが、発表した日記が歴史的な資料としての価値があると探検部員達から絶賛されてしまう

木乃香やのどかは絶賛されて嬉しそうだったが、横島は二人に適当に合わせて笑みを浮かべるだけだった



「面白い体験だったわ」

二時間に及ぶ発表会だったが、横島にとっては初めての体験ばかりで逆に面白かったようだ

一方満足げな笑顔の夕映や素直に嬉しそうな木乃香とのどかは、かなり満足な結果らしい


「ハルナも来れればよかったんやけどな~」

「ハルナは締め切りが近いから無理なのですよ。 それに彼女は発表会には向きません」

そのまま大学部の敷地を後にする横島達だったが、木乃香は今日居ないハルナが来れなくて残念そうで夕映とのどかは仕方ないと苦笑いを浮かべている

元々真面目な発表会を大人しく聞いてるのがつまらないと感じるタイプらしく、彼女は前回も参加しなかったらしい

しかも今日は個人的に作ってる同人誌の活動も忙しいようだ


「懐かしいな~」

「ゲームセンターが懐かしいのですか?」

発表会も無事に終わった横島は木乃香達に誘われるままにゲームセンターに来ていた

中に入るなり懐かしいと言い出す横島に、夕映達は不思議そうに首を傾げる


「ああ、旅をしてた頃は来てなかったからなー」

つい出た言葉を突っ込まれた横島は、まさか真実を話す訳にもいかずに笑ってごまかす


「ほう、カードを使うゲームが流行ってる訳ね………」

そのまま夕映や木乃香達はカードを使った魔法使いのゲームを始めるが、横島は当然知らないゲームだった

そんな横島は夢中になる彼女達から離れてゲームセンター内を見て回るが、やはり知らないゲームが多い


「こいつは変わらんなー」

UFOキャッチャーが並ぶ辺りに来た横島はふと懐かしくなり挑戦してみるが……


「横島さ……ん?」

それから15分ほどした頃いつの間にか姿が見えない横島を探しに来た木乃香だが、UFOキャッチャーの辺りに人だかりを発見する

人だかりの中に横島が居るかもと探すのだが……、肝心の横島はなんと人だかりの真ん中で注目を集めていた


「おう、どうした?」

「それ、どないしたん?」

周りの見物人の注目を気にしないで大きなビニール袋に、ぬいぐるみやらおもちゃを溢れんばかりに詰めた横島がいる

意味が分からない木乃香がビニール袋を指差し事情を尋ねるが、横島はUFOキャッチャーをしてるだけだと軽い調子で笑っていた


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