平和な日常~秋~3
さて夕映へのプレゼントで話が盛り上がる横島と木乃香だが、横島は同時に伸二におでんの作り方を教えていた。
これからの季節にはつい食べたくなるおでんだが、当然伸二の店でも母が作っていたらしく基礎からみっちりと仕込んでいる。
「前に作った時は関西風のおでんだったんだっけか」
「そうやね。 ウチのお母様にならった味や」
この日は濃い口醤油を使った関東風おでんを作っているが、以前横島が木乃香と作ったのは薄口醤油の関西風だった。
横島の作る和食はどちらかと言えば関西風が多いが、それは木乃香が関西風の味に慣れてることと横島自身も関西風の味で育ったからだったりする。
まあ横島の場合は特にこだわりなどないのだが、生まれ育った味を作る機会が多いのは横島もまた人の子だという証だろう。
「作るのに手間がかかるけど、この手間を省くとあかんしな~ 最近はコンビニのおでんも美味いしさ」
本格的な料理とは基本的には手間のかかる物だが、おでんはもまた手間と細かい気配りが味に出る料理だった。
おんなじ鍋で煮込むが当然食べ頃になる煮込み時間は違うし、ダシを取ることから具の下処理まで大変である。
ただ最近はコンビニでどこでもおでんが売ってるだけに、手間を惜しむと負けてしまうのだから飲食店は大変なのだ。
「ああ、冬のコンビニはついおでんが欲しくなりますよね」
「俺なんて昔おでんのつゆだけ貰ったことあったぞ。 金なかった時につゆだけ売ってくれって頼んだら可哀相な目で見られてタダでくれたんだ」
いつの間に話は夕映へのプレゼントからおでんに変わるが、ふと思い出したようにぽつりと語った横島の昔話に木乃香と伸二は信じられないような表情になる。
横島とすれば軽い笑い話のつもりだったが二人は素直には笑えなるはずもなく、特に伸二はどう反応していいか分からずごまかすように笑顔を見せた。
「つゆだけ貰ってどうしたん?」
「とりあえずご飯だけはあったからさ、ご飯につゆをかけて食べたよ。 結構美味いぞ」
まるで一昔前の貧乏の苦学生のようなエピソードを語る横島に、木乃香はいったいどんな人生だったのかと改めて考えさせられる。
確かに横島は木乃香と会った時は携帯電話すら持ってなかったことから貧乏でも不思議ではないが、そもそもなんでそんな貧乏生活をしていたのかは理解出来ない。
(やっぱり、一人にするとあかん人やわ)
根本的には優秀な横島だが、どっか普通の人とズレてるというかぶっちゃけ変だと木乃香は真面目に思う。
現状の横島はとんとん拍子に上手く行ってるが、それがいつまでも続くとは木乃香は考えてない。
どっかで変なミスをして失敗すると、あっさりと店を辞めて居なくなりそうだと真剣に考えていた。
まあ横島のことだからほとぼりが冷めた頃にはまた来る気もするが、どこか新しい土地でまた違う誰かと店を始めたらと思うと木乃香は素直に嫌だったし自分達がしっかりしなければと改めて心に誓う。
(やっぱり若くして成功するのは苦労したんだろうな)
一方の伸二は見た目の若さと料理の腕前を考え、横島も過去には苦労したのだろうと誤解していた。
その結果自分も頑張らねばと気合いを入れる伸二が、横島の本当の過去を知る日は恐らく来ないだろう。
というか知らない方が伸二も横島も幸せになるのは確かだった。
これからの季節にはつい食べたくなるおでんだが、当然伸二の店でも母が作っていたらしく基礎からみっちりと仕込んでいる。
「前に作った時は関西風のおでんだったんだっけか」
「そうやね。 ウチのお母様にならった味や」
この日は濃い口醤油を使った関東風おでんを作っているが、以前横島が木乃香と作ったのは薄口醤油の関西風だった。
横島の作る和食はどちらかと言えば関西風が多いが、それは木乃香が関西風の味に慣れてることと横島自身も関西風の味で育ったからだったりする。
まあ横島の場合は特にこだわりなどないのだが、生まれ育った味を作る機会が多いのは横島もまた人の子だという証だろう。
「作るのに手間がかかるけど、この手間を省くとあかんしな~ 最近はコンビニのおでんも美味いしさ」
本格的な料理とは基本的には手間のかかる物だが、おでんはもまた手間と細かい気配りが味に出る料理だった。
おんなじ鍋で煮込むが当然食べ頃になる煮込み時間は違うし、ダシを取ることから具の下処理まで大変である。
ただ最近はコンビニでどこでもおでんが売ってるだけに、手間を惜しむと負けてしまうのだから飲食店は大変なのだ。
「ああ、冬のコンビニはついおでんが欲しくなりますよね」
「俺なんて昔おでんのつゆだけ貰ったことあったぞ。 金なかった時につゆだけ売ってくれって頼んだら可哀相な目で見られてタダでくれたんだ」
いつの間に話は夕映へのプレゼントからおでんに変わるが、ふと思い出したようにぽつりと語った横島の昔話に木乃香と伸二は信じられないような表情になる。
横島とすれば軽い笑い話のつもりだったが二人は素直には笑えなるはずもなく、特に伸二はどう反応していいか分からずごまかすように笑顔を見せた。
「つゆだけ貰ってどうしたん?」
「とりあえずご飯だけはあったからさ、ご飯につゆをかけて食べたよ。 結構美味いぞ」
まるで一昔前の貧乏の苦学生のようなエピソードを語る横島に、木乃香はいったいどんな人生だったのかと改めて考えさせられる。
確かに横島は木乃香と会った時は携帯電話すら持ってなかったことから貧乏でも不思議ではないが、そもそもなんでそんな貧乏生活をしていたのかは理解出来ない。
(やっぱり、一人にするとあかん人やわ)
根本的には優秀な横島だが、どっか普通の人とズレてるというかぶっちゃけ変だと木乃香は真面目に思う。
現状の横島はとんとん拍子に上手く行ってるが、それがいつまでも続くとは木乃香は考えてない。
どっかで変なミスをして失敗すると、あっさりと店を辞めて居なくなりそうだと真剣に考えていた。
まあ横島のことだからほとぼりが冷めた頃にはまた来る気もするが、どこか新しい土地でまた違う誰かと店を始めたらと思うと木乃香は素直に嫌だったし自分達がしっかりしなければと改めて心に誓う。
(やっぱり若くして成功するのは苦労したんだろうな)
一方の伸二は見た目の若さと料理の腕前を考え、横島も過去には苦労したのだろうと誤解していた。
その結果自分も頑張らねばと気合いを入れる伸二が、横島の本当の過去を知る日は恐らく来ないだろう。
というか知らない方が伸二も横島も幸せになるのは確かだった。